看護師として働くための資格には、准看護師資格と看護師資格の2種類あります。准看護師と看護師には、どのような違いがあるのか気になっている人もいるのではないでしょうか。
そこで、准看護師の資格制度や看護師との違いについて解説します。准看護師資格を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。職場で准看護師と一緒に働いている人も、特徴や違いを理解することで、より一層仕事の連携がしやすくなりますよ。
准看護師とは?
看護師と名前が近い准看護師ですが、どのような職種なのか気になっている人もいるでしょう。准看護師の特徴には以下のものがあります。
看護師として働ける資格の一つ
准看護師とは、看護師と同じように、医師の診療の補助や患者さんの療養のサポートする資格です。一般に、看護師は医師の指示のもと、患者さんに対して医療行為を行いますが、看護に関しては自分の判断で行います。
一方、准看護師はすべての仕事をするのに、医師や看護師の指示を受けなければなりません。医療機関や介護福祉施設によっては、看護師のことを「正看護師」と呼び、准看護師と明確に区別しているところもあります。
毎年、看護職数の増加にともない准看護師の数も増えています。准看護師が働く職場は、病院や診療所、介護福祉施設に多い傾向があります。実際に、都道府県によっても異なるものの、看護師全体の3分の1から4分の1は准看護師が占めています。
准看護師と看護師の違い
准看護師と看護師の違いは、業務の進め方・受験資格・資格の発行元・将来のキャリアの4つです。ここでは、それぞれの違いについて詳しくみていきます。
大きな違いは「自己判断で業務が可能」かどうか
准看護師の仕事内容は、看護師のものと大きな違いはありません。看護師と異なる点は、准看護師は医師や看護師の指示のもとで仕事をすることです。
看護師も医師の指示のもとで仕事をしますが、准看護師は看護師からも指示を受ける点で異なります。
そのため、准看護師は自分の判断で看護の提供ができず、リーダー業務など責任のある仕事は行えません。
受験資格
准看護師の受験資格を得るには、中卒以上および養成所で2年以上の履修が必要になります。一方、看護師の受験資格を得るには、高卒以上および養成所で3年以上の履修が必要です。
資格の発行元
准看護師資格は都道府県知事が発行するのに対し、看護師資格は厚生労働大臣が発行します。看護師資格は国家資格ですが、准看護師資格は国家資格ではなく、都道府県が発行する免許です。
准看護師資格も看護師資格と同様に、保健師助産師看護師法(保助看法)により定められています。
目指せるキャリア
准看護師は最短で看護の仕事に就ける反面、看護師の下位資格になります。毎日、准看護師として働いている中で、もっと自己研鑽をしたいと考える人も多いでしょう。
准看護師としてスキルアップを目指すためには、まずは准看護師から看護師を目指す必要があります。
看護師免許があれば、認定看護師や専門看護師など自分が興味のある分野へのキャリアアップも目指せます。また、看護師になると、保健師や助産師など上位の看護職へのキャリアチェンジも視野に入れられます。
准看護師になるには?
准看護師として働くには、准看護師免許の取得が必須です。ここでは、准看護師免許の取得のポイントについてみていきます。
准看護師免許の取得が必要
准看護師になるには、各都道府県で行う試験に合格して准看護師免許を取得する必要があります。准看護師試験を受けるには、准看護師養成所にて必要な課程を履修しなければなりません。
最終学歴が中学校卒業であれば准看護師養成所で2年間、または高校の衛生看護科で3年間の課程を修了することになります。また、高校卒業であれば、准看護師養成所で2年間の課程の修了が必須です。
准看護師養成所には全日制と定時制があり、希望するライフスタイルに合わせて履修課程を選ぶことができます。全日制の養成所では、朝から夕方まで週3~5日で授業があり、定時制の養成所では平日の午後または夜間の週5日間授業があります。
准看護師試験概要
准看護師試験は各都道府県にて、年1回2月に行われています。都道府県によっては試験日程が異なるため、年に複数回受験することも可能です。准看護師試験の流れは次のとおりです。
・10~12月:願書提出
・2月:准看護師試験
・3月:合格発表
准看護師試験の問題は都道府県ごとで異なりますが、以下の内容から出題されます。
准看護師試験の合格率
准看護師試験の合格率は96~99%と高く、試験を受けた人の大半が合格しています。厚生労働省の報告によると、令和4年度の准看護師試験の合格率は97.9%でした。
准看護師試験の合格率が高い理由の1つに、受験者に「早く自立して、看護の仕事をしたい」というモチベーションが高い人が多い点が挙げられます。そういったことも、准看護師資格試験の合格率の高さにつながっているのかもしれません。
また、准看護師試験は年1回ではなく2回まで受けられるのも合格率の高さに寄与しているといえます。
准看護師の仕事内容
准看護師の仕事は、看護師と同じように医師の診療の補助や患者さんの療養サポートを行うことです。
具体的な仕事内容は、バイタル測定、点滴や注射、患者さんの身体的な介助、カルテの記入やカンファレンスの参加などで、看護師の仕事内容と大きく変わりません。
ただ、准看護師が仕事をするためには、医師や看護師の指示が必要です。そのため、急変時のように看護師も主体的に動く必要のある場面では、仕事内容が制限されることがあるでしょう。
また、他の看護師や准看護師への指示ができないため、病棟業務を取りまとめるリーダーや、スタッフを束ねる役職には就けません。
准看護師の勤務場所
厚生労働省の「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、2020年時点で約28.4万人の准看護師が就労しており、このうち、35.7%が病院勤務で、32.5%がクリニック勤務、24.8%が介護福祉施設での勤務と報告されています。
ここでは各勤務場所の特徴についてみていきましょう。
病院
准看護師の勤務先で最も多いのが病院で、全体の4割弱は病院に勤務しています。病院では、医師や看護師の指示のもとで、診療の補助や患者さんの療養の世話を行います。
病院勤務では、基本的な看護技術から専門的な医療処置まで、看護業務を幅広く学べるため、スキルを高めたい人に適しています。病院によっては准看護師でも夜勤ができる施設もあり、夜勤手当がつくことで給与アップを目指せるでしょう。
一方で、看護業界は看護師の高学歴化が進んでおり、准看護師の求人募集がない病院もあります。准看護師として経験を積んでも、勤務場所の選択肢が広くなるとは限りません。
クリニック(診療所)
准看護師の勤務先の中で、病院に次いで多いのがクリニックです。クリニックの大半は入院ベッドがないため、日勤のみの働き方が多くなります。准看護師のクリニックでの主な仕事は、医師や看護師の指示のもとで行う診療の補助業務です。
地域の人々の初期医療を担うクリニックでは。専門的な医療処置よりも、採血・注射・点滴・検査の補助といった基本的な看護技術が求められる場面が多くなります。また、施設によっては、准看護師に院内の清掃などの雑務を任せることもあります。
介護福祉施設
准看護師の勤務場所の中で、病院やクリニックに次いで多いのが介護福祉施設です。介護福祉施設では、医師や看護師の指示のもとで、バイタル測定・胃ろう管理・喀痰吸引・薬の塗布・服薬管理などを行います。
また、介護福祉施設はスタッフ数が少ないことも多く、准看護師も介護福祉士ら介護スタッフと協力して、利用者の食事や排泄の介助、入浴介助をすることもあります。
一方で、利用者の健康状態の判断には、看護ケアの経験やスキルが必要になります。准看護師が介護チームのリーダー的な役割を担っている施設もあり、経験とスキルがあればやりがいを持って働けるでしょう。
准看護師の働き方
勤務場所にもよりますが、病院やクリニックの准看護師の働き方は、看護師のスケジュールとほぼ同じです。ここでは、入居型の介護福祉施設で働く准看護師の一日の仕事の流れを紹介します。
准看護師の一日のスケジュール ~介護福祉施設(入居型)の場合~
9:00~ 出勤・引き継ぎ
夜勤者から夜間の入居者の状態について申し送りを受ける
9:30~ 健康チェック
入居者の部屋に訪問して、バイタル測定や健康状態の確認をする
11:00~ 昼食前の準備
昼食前に内服薬を準備する
必要な人には、血糖測定やインスリン投与を行う
12:00~ 食事介助
食事介助や見守りを介護スタッフと協力して行う
13:00~ お昼休憩
14:00~ 入浴介助
入浴介助を介護スタッフと協力して行う
15:00~ 医師の診療補助
医師の往診日に、診療の補助をする
17:00~ 夕食前の準備
夕食時の内服薬の準備、記録や夜勤者への申し送りをする
18:00~ 退勤
准看護師の給料
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」では、准看護師の毎月の平均給料は約29.6万円、賞与が約62.7万円、年収は約417万円と報告されています。
国税庁によると日本人の平均年収は461万円で、このうち男性が567万円、女性が280万円です。准看護師もその他の看護職と同様に、女性の割合が高い職業であることを考慮すると、准看護師の給料は平均よりも高めといえます。
准看護師と看護師の給料の違い
准看護師と看護師の給料の違いについて気になっている人もいるでしょう。両職種の給料の比較は以下です。
准看護師 | 看護師 | |
毎月の平均給料 | 約29.6万円 | 約35.1万円 |
平均賞与 | 約62.7万円 | 約86.2万円 |
平均年収 | 約417万円 | 約507万円 |
准看護師と看護師の間には、月給でおよそ5.5万円、年間賞与で23.5万円、年収で90万円の違いがあります。
看護師は准看護師に比べ養成機関での教育期間が1~2年長く、准看護師のリーダー的な立場にあるためです。また、副師長や看護師長などの役職に就く看護師が多いことも給料の高さに貢献しています。
今から准看護師資格を取得する4つのメリット
看護の仕事にあこがれて、これから准看護師を目指す人も多いでしょう。准看護師資格を取得するメリットには、以下のものがあります。
短期間で取得できる
准看護師の受験資格は、最短2年で取得できます。准看護師養成所の中には定時制コースを有するところもあり、仕事をしながら資格取得に向けて通学できます。
准看護師資格は、10代での経済的自立を求められている人も挑戦しやすいでしょう。
合格率が高い専門職
准看護師資格の試験合格率はとても高く、学校で習ったことをきちんと勉強すれば、合格できる可能性が高くなります。准看護師の職場は、病院以外にも、診療所、介護福祉施設など多様です。
准看護師資格取得後も働く場所を見つけやすく、資格の有用性が高いのも特徴です。
働いてから上のキャリアを目指せる
中卒で准看護師になった人でも、臨床経験を積むことで看護師養成所に入学できます。看護師は仕事がきつく新卒離職率が高い職種のひとつです。あこがれて看護師になったものの、仕事で上手くいかずに仕事を辞めてしまう人も多いという特徴があります。
一方、准看護師から看護師を目指す人は、看護師の仕事の理想と現実を十分把握しています。仕事へのモチベーションも高いので、看護師になったときも、離職のリスクが低いといえるでしょう。
准看護師から看護師になれば、給料アップを目指せます。看護師の給料について詳しく知りたい人は、こちらをご覧ください。
准看護師の需要が高いことも
病院や診療所、介護福祉施設では慢性的に看護師が不足しています。日本では高齢化が進んでおり、看護の知識と技術を持つ准看護師の需要はまだまだ高い状況です。
准看護師の資格があれば、結婚や出産でライフステージが変化したときも、パートの仕事を見つけやすいといった特徴があります。准看護師としての看護スキルを持っていれば、働くスタイルが変わっても、決して無駄になることはありません。
准看護師の将来性
准看護師資格は、戦後の病院増設が進む中、看護師の下位資格として発足されました。当時は女子の高校進学率が低く、十分な看護師数を確保するのが難しかったため、准看護師養成機関の応募要件は中学校卒業以上となっています。
その後、時代は大きく変わり、医療の高度化や急速な高齢にともない、専門的な知識や技術を持つ看護師が求められるようになりました。准看護師が業務を行うには、医師や看護師の指示が必要であることに加え、「医療現場のニーズを満たすには教育期間が不足している」という意見もあります。
とはいえ、准看護師は働きながらの資格取得ができ、若くして看護職になれることから、経済的なハードルを抱えている人も目指しやすい資格です。また、今後も高齢化にともない、介護現場のリーダー的な立場として准看護師が求められ続ける可能性もあります。
一方で、日本看護協会は看護師養成の一本化を目指しており、准看護師の養成の停止に取り組んでいます。ここ20年間で、准看護師の養成数は看護職全体の11%となっており、准看護師の新しい人材はますます減少すると考えられます。
准看護師から看護師へのステップアップすることも可能です。これから准看護師を目指す人は、資格取得後も看護師になる道を検討していくのがよいでしょう。
准看護師から看護師になるためには
准看護師から看護師になるためにはステップがあります。ここでは准看護師から看護師になる方法についてみていきましょう。
看護師養成所の修了が必須
准看護師から看護師を目指すルートはいくつかありますが、看護師養成所の卒業が必須です。看護師養成所には、全日制と定時制の他に通信制があり、全日制と定時制は2年間、通信制は3年間の履修期間が設けられています。
また、看護師養成所の入学要件を満たすには、高校を卒業している必要があります。中卒で准看護師になった場合、「高卒に相当する高卒認定試験に合格」か、「准看護師の臨床経験が3年以上あること」が求められます。
さらに、通信制の看護養成所を選ぶ場合、准看護師として7年の臨床経験が必要です。
看護師資格を取得するルート
看護師養成所を卒業後は、看護師国家試験に合格することで晴れて看護師になれます。改めて、准看護師資格をもつ人が看護師を目指すルートについてみていきましょう。
出典:日本看護協会
働きながらでも看護師になれる
看護師養成所は定時制や通信制のところもあり、准看護師として働きながらでも看護師を目指せます。
准看護師として働きつつ、看護師へ早くステップアップしたい人は、高卒または臨床経験3年以上で入学できる定時制の看護師養成所に通うのがおすすめです。通信制の養成所での履修には、7年以上の臨床経験が必要です。
まとめ
准看護師は都道府県知事によって与えられる下位の看護資格です。准看護師が看護の仕事をするには、医師や看護師の指示が必要ですが、仕事内容は看護師と大きな違いはありません。
准看護師は中卒で養成所に入学でき、養成期間も2年間と短いのが特徴です。養成所には全日制に加えて、定時制のところもあるので、働きながら准看護師を目指せます。
また、准看護師資格を取得後も、高校卒業や一定の臨床経験を積むことで、看護師養成所に入学できます。早く看護の仕事に就きたい人や、看護の仕事に携わりながら、ステップアップしたい人は、准看護師を目指してみるのもよいでしょう。
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参考:厚生労働省 令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
参考:政府統計の総合窓口 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
参考:准看護師養成数の減少