看護師全体における男性の割合はまだまだ少ないのが現状です。身近に同性の相談相手がおらず、今後の方向性に悩む人も少なくないでしょう。そこで本記事では、男性看護師の給料事情やおすすめのキャリアプラン、男性看護師が働きやすい職場の見分け方などについて解説します。よりよい働き方を実現したい人は、最後まで読んでみてください。
《2024年最新》男性看護師の割合
厚生労働省の「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、看護師全体における男性の割合は8.6%です。平成30年は7.8%、令和2年は8.1%で、男性看護師の割合は年々増えていることがわかります。同様に、男性保健師の割合も令和4年時点で3.2%に達しており、毎年増加傾向にあります。看護師業界はまだまだ女性中心の社会ではあるものの、男性の参入が着実に進んでいるといえるでしょう。
参照:厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
男性看護師の給料・平均年収はいくら?
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、男性看護師の給料と平均年収は以下の通りです。
給料 | 平均年収 | |
男性 | 約35.9万円 | 約523万円 |
女性 | 約35万円 | 約506万円 |
男性看護師の給料は女性看護師よりも高く、年収では約16万円の差がつきます。これは、男性はライフイベントに左右されにくく、継続して働けることが最大の要因だと考えられます。
また、男性看護師の年齢別の給料と平均年収は以下のとおりです。
給料 | 平均年収 | |
20~24歳 | 約29.5万円 | 約396万円 |
25~29歳 | 約34.6万円 | 約491万円 |
30~34歳 | 約35.5万円 | 約516万円 |
35~39歳 | 約37.6万円 | 約544万円 |
40~44歳 | 約38.5万円 | 約555万円 |
45~49歳 | 約40万円 | 約591万円 |
50~54歳 | 約38.7万円 | 約562万円 |
55~59歳 | 約39.8万円 | 約595万円 |
60~64歳 | 約33.5万円 | 約492万円 |
65~69歳 | 約34.8万円 | 約480万円 |
70歳〜 | 約30.9万円 | 約435万円 |
※企業規模計10人以上
男性看護師の平均年収は45~49歳でピークを迎え、591万円に達します。国税庁の調査によると、45~49歳の一般男性の平均年収は676万円で、 同年代の男性と比べると給料は低いといえるでしょう。
参照:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
参照:国税庁「1 平均給与」
男性看護師の需要は?
男性看護師の需要は年々高まっています。実際に、厚生労働省の「第4回 新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会 資料3-3」によると、「男性看護師を増やしたいと思うか」というアンケートに対し、調査対象となった病院の75% が「増やしたいと思う」と回答していました。
臨床現場においても、男性看護師を求める声は多く、体格がよい患者の移乗やリハビリのサポートなどの筋力を要する場面で頼られる傾向にあります。 加えて、女性が多い看護師業界では「男性看護師がいれば雰囲気がよくなる」や「男性目線の意見は貴重である」という話もよく聞かれるものです。以上のことから 、男性看護師の需要は今後もさらに増していくといえるでしょう。
参照:厚生労働省「第4回 新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会 資料3-3」
男性看護師が活躍している診療科・領域は?
全国男性看護師会の「男性看護師に関する調査結果報告書」 によると、男性看護師の配置先で最も多いのは内科系病棟で、次いで混合病棟、手術室、集中治療室、外科系病棟の順でした。
男性看護師は女性よりも筋力があり、力仕事が求められる部署で活躍しやすい傾向にあります。特に、手術室や集中治療室、精神科など、重症患者や不穏患者の介助が必要になる場所では、男性看護師の存在がより強く求められるといえるでしょう。また、男性特有の悩みに対応できることから、男性美容専門クリニックやAGA ・ED治療に特化したクリニックをはじめ、病院以外の職場でも活躍できます。
参照:全国男性看護師会「男性看護師に関する調査結果報告書」
男性看護師として働くメリットとは?
男性看護師は雇用と収入が安定しており、キャリアアップの機会も多くあります。また、女性看護師と比べて筋力があることから、様々な場面で必要とされます。それぞれについて解説していきます。
1:雇用・収入が安定している
厚生労働省の統計によると、看護師の有効求人倍率は2.31で、一般職の1.28を大きく上回っています。これは、看護師の需要の高さを示しており、結果として安定した雇用と収入が期待できます。看護師は就職先の選択肢が多く 、自身のスキルにあわせて転職できることから、条件のよい職場にも移りやすいといえるでしょう。
参照:厚生労働省「job tag」
参照:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年3月分及び令和5年度分)について」
2:キャリアアップを目指しやすい
男性看護師は結婚・出産などの ライフイベントによる影響が少なく、継続的に働けることから、キャリアアップしやすい立場だといえるでしょう。男性看護師は女性看護師に比べ長期就業が可能な点を評価されやすく、専門資格の取得や管理職への昇進などを勧められやすい傾向にあります。
3:男性看護師の力を求める場が多い
腕力が必要な介助や男性患者の対応など、男性看護師が求められる場面は多岐に渡ります。たとえば、不穏患者の対応や重症患者の移乗など、女性看護師では力が足りないときに頼られる傾向にあります。また、男性特有の悩みや心配事を抱える患者に対しては、男性看護師の方がきめ細やかなケアを提供できるケースもあります。患者の中には女性よりも男性の意見を優先して受け入れる人もいるため、女性看護師に代わって看護を行うケースも少なくありません。
男性看護師が抱えやすい悩み・デメリットはある?
男性看護師は少数派であり、同性の相談相手が見つかりにくいとされます 。また、女性ばかりの職場に馴染めず、人間関係を上手く築けないこともめずらしくありません。それぞれについて詳しく解説していきます。
1:同性の先輩が少ない
看護師全体のうち男性の割合はわずか8.6%です。同性の先輩や同僚が少なく、男性看護師特有の悩みや課題を相談しにくい環境だといえます 。ロールモデルとなる先輩看護師が見つからず、今後のキャリアに迷うことも多くあります。
2:女性看護師との関わり方がむずかしい
男性看護師は 価値観の違いから、女性看護師と上手く関われずに苦労することがあります。たとえば指導の際には、口調が厳しく受け取られ誤解を招いたり、 環境整備では細かい配慮ができていないと指摘を受けたりといった内容です。女性中心の職場文化に馴染めず、良好な関係をつくることにむずかしさを感じる人は多いといえるでしょう。
男性看護師が良好な人間関係を築くためのポイント
男性看護師が良好な人間関係を築くには、女性に対してきめ細やかに配慮したり、自身の清潔感を維持したりすることが大切です。それぞれについて詳しく解説していきます。
1:男性・女性で差別的な境界をつくらない
職場で良好な人間関係を築くには、性別に基づく差別的な境界を作らないことが大切です。業務の分担や役割の割り当ては性別だけで判断せず、個々の能力や適性に応じて決定しましょう。たとえば、力仕事を男性だけに任せ、患者の心理的ケアを女性だけに依頼するなどの偏りは避けるべきです。 また、コミュニケーションの際も、性別によって口調や態度を変えるのではなく、一人の専門職として対等に接するとよいでしょう。チーム全体で互いの強みを認め合い、男女問わず協力し合える環境を作ろうとする姿勢が求められます。
2:女性への配慮を大切にする
男性看護師が女性看護師と良好な関係を保つには、女性特有の悩みや心境を汲み取り、細やかに配慮することが肝心です。たとえば、月経で体調不良を訴える女性看護師に対して休息を促し、残りの業務を代行するといったことです。このような思いやりのある行動を積み重ねることで、自然と人間関係もよくなるでしょう。
3:清潔感のある身だしなみを意識する
女性の多い職場環境では、身だしなみへの意識が特に重要です。というのも、女性は一般的に清潔感に対して高い意識を持っているからです。男性看護師の清潔感が欠けている場合には、改善を求められることも少なくありません。男性看護師は、ふだんから髪型を整えることや、制服のシワや汚れに注意を払うことを心がける必要があるでしょう。これらの配慮は、看護師としての信頼性を高め、患者と良好な関係を築くきっかけにもなります。
男性看護師のキャリアプラン・将来性について
男性看護師はライフイベントの影響を受けにくく、長期的な目線でキャリアを積むことができます。専門看護師や認定看護師など、研修期間が長い資格も取得しやすいでしょう。看護師としてのスキルを高めたい場合は、どの現場でも役に立つICLS・BLSなどの資格を取得するのも一つの手段です。また、メンズ美容クリニックやED・AGA治療に強みを持つクリニックなど、男性向けの専門外来に転職し、専門性を高めていくのもよいでしょう。マネジメントが得意な人は、看護部長や看護師長などの管理職を目指すといった道もあります。
ただし、看護師の年収は経験年数を重ねても増えにくく、45〜49歳の時点では一般男性の平均年収よりも約85万円少なくなります。将来的にしっかり稼ぎたい場合には、給料が高い職場への転職や看護師経験を活かした起業なども検討しましょう。
男性看護師・看護学生が転職時・就活時に確認すべきポイント
男性看護師の在籍状況や受け入れ体制、同性管理職の有無などを知ることで、男性看護師でも働きやすい環境かどうかを事前に判断できます。入職前に確認すべきポイントについて解説します。
1:男性看護師の在籍状況
男性看護師の在籍状況を確認しておけば、同性の看護師とどのくらい交流を持てるのかがわかります 。面接の際に、男性看護師の人数や割合、勤続年数、所属部署などを聞いておきましょう。 男性看護師の活躍ぶりを詳しく確認したいときには、職場見学を申し出るのも有効な手段です。
2:男性管理職の有無
男性の管理職が在籍している職場は、男性看護師が活躍しやすい環境だといえます。自身も同じように管理職を目指せる可能性が高く、男性特有の悩みや課題についても相談しやすいでしょう。男性の育児休暇取得に対する理解を得やすく、ワークライフバランスを保ちやすい職場であるという期待が持てます。
3:男性看護師の受け入れ体制
男性看護師の受け入れ体制を確認することは、自身が快適に働けるかどうかの判断材料になります。男性用の更衣室やロッカーの有無、トイレの数、男性看護師向けの交流会の開催状況などを確認しましょう。また、男性看護師の意見が尊重され、チーム内で平等に扱われているかも大切なポイントです。職場見学が可能な場合は、実際に勤務している男性看護師に話を聞くことをおすすめします。また、育児休暇や介護休暇などの福利厚生制度が男性にも利用しやすいかどうかを確認することも必要でしょう。
まとめ
この記事では、看護師全体における男性の割合や給料事情、キャリアの将来性などについて解説してきました。男性看護師の割合は全体の8.6%と少ないですが、需要は年々高まっています。看護師は雇用が安定しており様々な場面で活躍できるうえ、男性看護師はライフイベントの影響を受けにくいことからキャリアアップも目指しやすいでしょう。男性看護師に理解のある職場を選べば、自身の強みを活かしながら、やりがいを持って活躍できます。
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