【保健師とはどんな職業?仕事内容や勤務先、看護師との違いを解説】

【保健師とはどんな職業?仕事内容や勤務先、看護師との違いを解説】

【保健師とはどんな職業?仕事内容や勤務先、看護師との違いを解説】

地域住民の健康サポートに欠かせない存在、保健師。看護師資格を持つ人や資格取得見込みの人の中には、「保健師として働きたい」と考えている人もいるのではないでしょうか。

本記事では、保健師の仕事内容や主な活躍の場、看護師との違いについて解説します。保健師として働く道を検討している人は参考にしてみてください。

保健師とは

保健師とは、都道府県の保健所や市町村の保健センターなどで地域住民の健康を支える看護職のことです。看護師が医療機関で医師の診療補助や患者さんの療養上の世話をするのに対して、保健師は地域住民や地域全体の保健衛生活動を行います。

保健師の仕事内容について

保健師の主な仕事内容は、地域住民の健康増進や疾病予防を目的とした保健活動です。看護職について定める「保健師助産師看護師法(保助看法)」では、保健師について以下のように定義しています。

第Ⅰ章/第2条
「保健師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。

出典:e-GOV 法令検索/保健師助産師看護師法

保健師の役割

保健師には、働く場所によっていくつかの役割があります。主な役割は次のとおりです。

1.行政保健師

行政保健師とは、都道府県の保健所や市町村の保健センターで働く保健師のことです。いずれも公衆衛生の専門家として働きますが、それぞれ仕事内容が異なります。

都道府県の保健所では、結核やHIVなどの感染症や難病、精神疾患患者への相談対応や支援を行います。一方、市町村の保健センターでは、母子の乳幼児健診や育児支援、成人の生活習慣病の予防対策、高齢者の介護・認知症予防など、幅広い年齢層の地域住民の疾病予防や健康増進のための保健活動を行います。

都道府県と市町村の保健師は、地域の健康問題を調査するために、互いに連携や協力をする場面も多くあります。

2.産業保健師

産業保健師は、企業や事業所に所属して働く保健師です。産業医や同じ職場に在籍する衛生管理者と協力して、従業員の健康管理や疾病予防のための活動を行います。主な業務内容には、従業員の健康診断の実施や健康相談の対応、健康指導があります。

また、近年は従業員のメンタルヘルスケア、海外出張者への感染症対策といった役割も担っています。

3.学校保健師

学校保健師は、校内の児童・生徒や教職員の健康管理を行う保健師で、ケガや急病の処置や健康相談の対応を担います。学校保健師とよく似ている職種に養護教諭があります。学校保健師との違いは、養護教諭は保健室の先生として、児童・生徒・教職員の健康管理や健康診断の実施に関わる業務を行うほか、子どもの発達の専門家として保健の授業も行います。

4.病院保健師

病院保健師は、医療機関にある地域連携室や保健指導室で働く保健師です。地域連携室は、入院や退院予定のある患者さんが適切な医療を受けられるように、院外の医療機関と調整を図る部署です。

病院保健師が行う保健活動の対象には、病院職員も含まれており、病院職員の健康診断や健康相談の対応も行っています。

保健師と看護師の役割の違いは?

保健師も看護師も同じ看護職ですが、両者の資格や業務内容は明確に異なります。看護師は医療機関などで、医師の診療補助や病気やケガをした患者さんの療養上の世話を行います。一方、保健師は地域住民に対して疾病予防や健康増進のための保健活動を行います。

看護師として働くには厚生労働省が定める看護師免許の取得が必要ですが、保健師として働くには保健師免許と看護師免許の両方が必要です。

保健師資格試験の受験には「看護師資格を取得済みまたは取得見込みである」という条件があります。保健師の養成カリキュラムを持つ看護系大学に入学して必要科目を取得すれば、卒業前に保健師資格試験と看護師資格試験のダブル受験をすることができます。

しかし保健師資格試験に合格しても、看護師資格試験で不合格になると、保健師免許を得ることができません。このことから、保健師は看護師の上位資格といえます。

保健師になる方法

保健師になるには、指定の養成カリキュラムを履修した後、看護師資格取得見込みまたは看護師資格取得後に保健師資格試験に合格する必要があります。具体的には、以下の2つです。

 保健師養成カリキュラムのある看護系大学で必要科目を履修し、看護師資格取得見込みで保健師資格試験に合格する
 看護師資格取得後、養成機関で必要科目を履修し、保健師資格試験に合格する

看護師資格取得見込みで保健師資格の取得を目指す場合、志望する大学に保健師の養成カリキュラムがあるか確認しましょう。すべての看護系大学に保健師養成カリキュラムがあるわけではありません。また、看護師資格取得後に保健師の養成カリキュラムを履修するには、保健師養成所に入学する以外にも、短期大学や大学院で専攻する方法もあります。

出典:公式社団法人 日本看護協会/看護職になるには

保健師として働くメリットは?

ここからは保健師として働くメリットについて紹介します。

人々の健康をサポートすることができる

保健師は地域住民の健康増進や疾病・介護予防を目指した支援を行います。看護師として医療機関で働いていると、疾病予防のためのアプローチの必要性を痛感する人も多いでしょう。保健師は地域住民の病気の有無にかかわらず、幅広い年代の人々に対して保健活動をするため、地域全体の健康の底上げに貢献できます。

勤務先の幅が広い

保健師は、勤務先によって仕事内容が異なります。地域住民の健康をサポートしたいのであれば“行政保健師”、ビジネスパーソンの健康管理に興味があれば“産業保健師”、学校保健に興味があったり、子ども好きであったりすれば“学校保健師”と、自分の興味や関心に合わせて働く場所を選ぶことができます。また地域包括支援センターで、高齢者の生活支援を行う道もあります。

安定した職業である

保健師の半数以上は行政保健師で、保健所や保健センターで公務員として働いています。公務員の勤務先は一般の会社員よりも、ワークライフバランスを重視する傾向があります。結婚や出産後に育児短時間勤務制度を利用したり、親の介護が必要になったときに介護休暇を取ったりすることもできるでしょう。

また公務員の場合、民間企業のように業績悪化などにより、給与や雇用が不安定になることがありません。行政保健師として働けば、安定した収入を得られるだけでなく、ライフステージが変わっても柔軟に働き続けられます。

保健師に向いている人の特徴

保健師に適しているのは、明るくコミュニケーション能力の高い人です。保健活動ではさまざまな住民に対して、健康相談やアドバイスをするため、誰とでも打ち解けられるスキルが必須です。

とくに保健師が健康指導をするときは、相手の目線に立ったうえで助言や指導をする力が求められます。どんなに健康指導の内容が正しくても、共感力が不足していれば、相手の行動変容を促すことはできません。

また、必要により保健師が住民の自宅訪問をすることもあります。限られた訪問時間の中で必要な情報収集をし、問題や課題を抽出するための観察力を養う必要があります。

保健活動の成果は地域全体のデータの推移から判断することも多く、すぐに目に見えた効果が表れるわけではありません。地域の健康課題の解決に向かって、着実に活動できる粘り強さも求められます。

保健師の労働時間や環境

保健師の勤務は日勤のみで残業が少ないのが特徴です。看護師のように変則的なシフトや長期間の夜勤勤務がない分、一般的な会社員と同じように、規則正しい生活リズムを送りたい人にも適しています。ただコロナ禍のように、新興感染症の流行が起きると、住民対応のために残業が続くことがあります。

また保健師の職場は、看護師が働く医療機関よりも退職者が少なく、勤務年数が長いといった特徴があります。毎年、新卒や中途採用者が少人数いるものの、職場のメンバーがころころ変わることはありません。公務員は年功序列制であることも多く、行政保健師になれば、勤務年数を重なるにつれて、重要な役職にも就きやすくなります。

保健師の給与はどれくらい?

2024年度の東京都の保健師採用試験募集要項によると、保健師の初任給は243,800円(地域手当込み)です。保健師や看護師の実務経験がある人には、経験に合わせて給与に加算されます。このほか、扶養手当・住居手当・通勤手当がつきます。

地域にもよりますが、新卒で保健師になった場合、初任給は諸手当込みで約26.5万円、手取りで約22万円、年収500万円ほどになります。全職種の新卒者の平均月収が23.7万円、平均年収が284万円であるのと比較すると、保健師の給与は一般的な会社員よりも高めであることがわかります。

また看護師と同じように、保健師は男性の割合が少なく、9割以上が女性で占められています。女性は男性よりも賃金が低い傾向にあることから、保健師の給与は一般女性の給与よりも高いといえるでしょう。

しかし、夜勤勤務や残業のある看護師と比べ、保健師の給与は少なくなります。看護師を経て保健師になった場合、給与水準に不満を抱くこともあるかもしれません。

保健師として働くためには?

保健師として働くには、“保健師資格取得済み”または“取得見込み”で採用試験を受ける必要があります。行政保健師の採用試験については、多くの地域で毎年6月から9月頃に実施しています。

行政保健師の採用試験は公務員試験であり、一次試験に筆記試験、二次試験に面接が行われます。筆記試験では専門知識を問う問題のほかに、一般教養に関する問題もあるため、別途対策が必要です。

とくに行政保健師の採用枠は、毎年数名程度であることが多く、看護師の採用試験よりも就職倍率が高くなります。試験日は地域によって異なるため、複数の採用試験を受けるとよいでしょう。またすべての採用試験が不採用だったときのために、看護師の採用試験も受けておくことをおすすめします。看護系大学など養成所の在籍時に、優秀な成績を収めることも大切です。

今年度の採用試験に落ちてしまった場合は、いったん看護師として働き、来年度以降に再挑戦することもできます。保健師は、生活習慣病や介護予防対策など退院後の患者さんをフォローする機会も多く、それぞれの疾患を理解したうえで健康支援をする必要があります。看護師経験があれば、疾患に対する詳しい知識があることをアピールでき、採用試験で有利になるでしょう。

まとめ

保健師は看護職のひとつで、地域住民の健康増進や疾病予防を目的とした保健活動を行う職種です。保健師の仕事内容は勤務先によって異なりますが、予防医療や地域看護に興味がある人に向いています。

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