看護師の勤務先は病院だけでなく、活躍できる現場が多く存在します。選択肢が豊富なため、かえって将来のキャリアに悩む看護師は少なくありません。特に看護師として数年働き、昇給や昇格を望むようになった人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、キャリアアップを目指す看護師に向けて、キャリアプランの考え方や具体的な働き方について解説します。
看護師が目指すべきキャリアは主に3つ
現状の年収や役割に満足できず、自身のキャリアについて思い悩む看護師も多いのではないでしょうか。
自身のキャリアプランを考えるときは、将来像を明確に描くことが大切です。特に高い年収で働き、経歴を充実させるには、専門性を身に付けたり、さまざまな経験を積んで知識やスキルを磨いたり、管理や教育に携わることが重要です。
看護師がキャリアアップを目指すのであれば、次のような方向性が考えられます。
・幅広い知識、技術を持つ『ジェネラリスト』
・管理や教育に携わる『マネジメント』
次の項目からは、それぞれの具体的な方策を詳しく紹介します。
特定分野の専門家『スペシャリスト』
「小児看護に特化した病院で働きたい」、「がん看護の専門家になりたい」といった目標がある方は、スペシャリストの道に進むことが望ましいでしょう。
スペシャリストを目指す場合は、「認定看護師」や「専門看護師」といった資格を取得することをおすすめします。ここでは、ふたつの資格について解説します。
認定看護師を目指す
認定看護師とは、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術や知識を有する看護師のことです。日本看護協会が提供する認定看護師教育を受け、認定審査の基準に満たすことで資格を取得できます。
看護師になるには、認定看護師教育機関に入学し、修了する必要があります。保健や医療、福祉の現場で高度な技術・知識が必要な分野のことを『認定看護分野』と定め、認定看護師教育機関が各分野の教育を行っています。
2020年に再編された新しい認定看護分野には以下のものがあります。
引用:「認定看護師」(公益財団法人 日本看護協会)
※改正前の認定看護分野は2026年に教育が終了します。
認定看護師の教育課程を受講するには、主に3つの条件があります。
■受験の条件
・看護師免許取得後、実務研修期間が通算5年以上、そのうち3年以上は認定看護分野の実務研修を終えていること
・認定看護師教育機関にて6ヶ月以上600時間以上の教育課程を修了すること
資格を取得すると、特定の看護分野に関する専門知識を持つことを証明し、幅広い職務に携わることができます。職場では昇給や昇格に近づきますし、転職活動でも有利に立ち回ることができるでしょう。
専門看護師を目指す
専門看護師とは、複雑で解決困難な問題を抱える患者さんや家族、団体を対象に、高い水準の看護ケアに必要な特定分野の技術・知識をもつ看護師のことです。
専門看護師は、認定看護師と同様に日本看護協会の認定資格ですが、対象者に家族や団体が含まれる点などから、より包括的なケアを実践します。そのため、複数の医療従事者と協力してサポートする必要があります。
認定分野には、以下のものがあります。
出典:「専門看護師」(公益財団法人 日本看護協会)
■受験の条件
・5年以上の実務研修期間(うち3年以上は専門分野での実務研修)があること
・大学院で日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位(総計26単位または38単位)を取得すること
資格を取得すると専門的な知識をもって看護ケアにあたり、患者さん、その家族の権利を守る役割も担います。多くの関係者から頼られる存在になり、現場のリーダーとして活躍することになるでしょう。
幅広く活躍する『ジェネラリスト』
特定の看護分野だけではなく、幅広い知識・技術を有する看護師がジェネラリストです。日本看護協会では、看護師のジェネラリストのことを領域に関係なく「経験と継続教育によって習得した暗黙知に基づき、その場に応じた知識・技術・能力が発揮できる者」と定義されています。
出典:「継続教育の基準」(公益財団法人 日本看護協会)
ジェネラリストの看護師は、状況に応じて臨機応変に質の高い看護ケアを行うのが特徴で、特定の資格の取得を目指すものではありません。
そのため、キャリアアップに向けた道は、人によってそれぞれです。「どの現場でも通用するような看護師になりたい」と考えている方に適している道といえます。
病院以外の職場で経験を積む
看護を行う場所は、病院だけでなく、患者さんの自宅、介護施設など多岐にわたります。病院以外の職場で経験を積むことも、看護師としての知見を深めることにつながります。
また、厚生労働省は在宅医療を推進しています。ジェネラリストを目指すのなら、在宅看護や、病院以外の施設でどのように看護師が働いているかを知ることも重要です。
看護師を導く『マネジメント』
看護部長や看護師長などの管理職を目指すのもひとつの策です。病棟管理やスタッフ管理などを行いつつ、現場の看護師が働きやすい環境を整えていきます。
看護主任を目指す
看護主任やリーダー看護師は、現場で看護師をまとめる立場です。
厳密には管理職と呼ばれる立場ではないものの、管理職を目指すならこれらの役割に就くことが第一のステップといえます。
看護主任になる方法は、病院内であらかじめ決められていることもあれば、経験年数を元に決まることもあります。
10年程度の経験と、周りから認められる能力や実績が必要といえます。
認定看護管理者を目指す
認定看護管理者とは、日本看護協会が認定している資格で、「管理者として優れた資質を持ち、創造的に組織を発展させることができる能力を有すると認められた者」と定義されています。
看護部長や訪問看護ステーションの所長としての立場から、看護師がより良く働ける環境や組織を作り、サービスの質を向上させていく役割を担います。
認定看護管理者になるには、看護師としての実務経験が5年以上あり、そのうち3年以上は看護師長以上看護管理の経験があることが第一の条件。その上で、看護協会が定める教育課程を修了するか看護管理に関連する学問領域の大学院(修士課程)を卒業する必要があります。
出典:「認定看護管理者」(公益財団法人 日本看護協会)
キャリアアップを実現するためにできること
将来を見据えて、看護師として長期間働くためにキャリアアップは有効な手段です。3つのキャリアプランのうち、どの道を進むのかを考えることが重要です。
早期から計画を立てて、実行していくことが求められます。それでは具体的にどのように行動すれば良いのでしょうか。ここでは、キャリアアップを実現させるためにするべきことを紹介します。
セミナーや勉強会に参加する
まずは、日頃から自発的に学習する時間を設けることが大切です。新しい知識や技術を習得することは、キャリアアップしていく上で必要不可欠です。
看護師を対象にしたセミナーは全国各地で開催されています。看護学会など団体による学術集会も定期的に開かれているため、積極的に参加して知識のアップデートに努めましょう。
制度の充実した職場に転職する
キャリアアップを目指すなら、転職も視野に入れてみましょう。例えば、認定看護師や専門看護師を取得したいのであれば、補助金制度や、勉強会参加を援助する制度が充実した病院だと、働きながら資格取得に必要な勉強ができます。
スマイルナースでは、専任の転職コーディネーターがあなたの希望を聞き、理想のキャリア実現をサポートします。目指す将来像を相談しながら求人を探すこともできますから、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
看護師のキャリアアッププランは、仕事に慣れてきた看護師の多くが悩むことです。
専門性を磨く『スペシャリスト』、幅広く活躍する『ジェネラリスト』、看護師を導く『マネジメント』の3つに分類されます。
まずは自分がどのような道に進みたいか決めるのが第一歩です。また、必要な資格を取得し、働く環境を変えるなど、実現に向けて行動することが大切です。