美容看護師は、患者の「美しくなりたい」という願いに寄り添い、専門的なケアを提供する仕事です。美容医療の需要が高まるにつれ、「美容看護師になりたい」と考える看護師も増えてきています。
この記事では、美容看護師の仕事内容から必要な資格、1日のスケジュール、給料の目安まで、詳しく解説します。また、美容看護師に向いている人の特徴や転職時のポイント、キャリアプランについても紹介するので、美容看護師に興味がある人は参考にしてみてください。
そもそも美容医療とは?
美容医療とは、患者の容姿や体型の改善を目的とした医療行為のことを指します。疾患の治療や健康維持を目的とする一般的な医療とは異なり、見た目の美しさや若々しさを追求します。
美容医療の大きな特徴は“自由診療であること”です。一般的な医療機関では保険診療が中心で、医療機関の収益は厚生労働省が定める診療報酬に基づきます。一方、美容医療で扱うのは自由診療(保険適用外の診療)がメインとなります。保険適用外の診療に対する報酬額は医療機関が独自に設定できるため、美容クリニックの診療費は高くなりやすいのです。
美容医療の領域は大きく分けて次の2つです。
● 美容皮膚科
● 美容外科
美容皮膚科では主に脱毛やシミ取りなどの比較的侵襲性の低い施術を、美容外科では脂肪吸引や二重整形などの外科的な手術を行います。どちらも専門的な知識と技術が必要とされる領域です。
美容看護師とは?
美容を目的とした治療や施術を行うクリニックで働く看護師のことを、美容看護師と呼びます。美容看護師は医療と美容の両方の専門知識を持ち合わせた専門職です。
美容看護師の活躍の場は広く、大手美容クリニックチェーンから個人経営のクリニック、病院の美容外科までさまざまです。また脱毛専門クリニックやアートメイク専門クリニックなど、特定の施術に特化したクリニックで働く看護師も増えています。
美容看護師の役割
美容看護師の最も重要な役割は、患者の美容への願いに寄り添いながら、コンプレックスの改善や理想の容姿の実現をサポートすることです。そのため、看護技術だけでなく、美容に関する専門知識やカウンセリング能力も求められます。
美容クリニックの患者は疾患や怪我の治療ではなく、自身の悩みの解消や理想の容姿の実現のために来院します。高い診療費を払っていることもあり、一般診療科の看護師と比べ、美容看護師には高い接客スキルやコミュニケーション能力、患者に最適な施術を提案する力が求められます。
採血やルートキープといった基本的な看護技術に加え、美容医療特有の知識や技術を習得することで、幅広い業務に対応できる看護師として成長していけます。
美容看護師の1日のスケジュールと仕事内容
美容看護師の1日の仕事内容をみていきましょう。
時間 | 主な業務内容 |
9:30 | 出勤・朝礼 当日の予約状況確認 スタッフ間での情報共有 施術室や機器の準備・点検 |
10:00 | 午前の診療開始 患者の受け入れ カウンセリングの実施 医師の診察補助 施術の実施または介助 |
12:00 | 交代での休憩 |
14:00 | 午後の診療再開 レーザー治療や注射などの施術 美容点滴の実施 術後のケア指導 |
17:00 | カルテ記入や記録の整理 |
18:00 | 片付けと翌日の準備 使用した器具の滅菌・消毒 備品の補充 翌日の予約確認・準備 |
19:00 | 終礼・退勤 |
一般的な病院やクリニックでは、8時半〜9時から診療がスタートするため、出勤時間が早くなりがちですが、美容クリニックは10時から診療が始まるところが多く、看護師の出勤時間も遅くなります。
また基本的に完全予約制で予定外の対応が発生しないため、残業も少ない傾向にあります。
なお多くの美容クリニックでは患者数の多い土日祝日も営業しており、シフト制での勤務となるでしょう。
美容看護師の特徴・魅力と働くメリット
美容看護師として働くにあたっては、病院勤務とは異なる魅力やメリットがあります。
患者の「美しくなりたい」という願いを受け止め、カウンセリングから施術・アフターケアの指導まで一連のプロセスに寄り添います。コンプレックスを克服し、表情が明るくなっていく患者の変化に立ち合うことは、大きなやりがいにつながります。
また、最新の美容医療の知識や技術を習得できることも大きな魅力です。日々美容に関わるなかで、自分自身もスキンケアや健康管理などの美容に対する意識が自然と高まります。多くの美容クリニックでは、社員割引で自社の施術を受けたり、ドクターズコスメを購入したりでき、看護師自身も美しさを追求していけるでしょう。
さらに、美容看護師は、ワークライフバランスを整えやすいこともメリットとして挙げられます。美容クリニックでは夜勤がなく、完全予約制のため長時間の残業もありません。プライベートの時間を充実させたい看護師にとって理想的な職場環境といえます。
美容看護師に必須・おすすめの資格・試験は?
美容看護師として働くための基本的な条件は、“看護師免許の取得”のみです。クリニックによっては、病院での臨床経験を求められることもありますが、必須ではありません。なかには臨床経験が浅くても採用するクリニックもあります。
しかし、美容看護師として活躍する中で、さらに専門性を高めてキャリアアップを目指すなら、美容関連の資格取得を検討してもよいでしょう。ここでは、美容看護師におすすめの資格や検定を紹介します。
● 日本化粧品検定
化粧品に関する幅広い知識を身に付けられる検定試験です。医療・美容関係者に関わらず幅広い層の人々の化粧品・美容に関する知識の普及と向上を目指しており、多くの人が受験しています。
3級、2級、準2級、1級に分かれており、美容業界で働く人は1級と2級、ふたつの合格を目指すとよいでしょう。
● スキンケアアドバイザー
肌トラブルに悩む人や若々しい肌を維持したい人に向けて、正しいスキンケア方法や化粧品選びのアドバイスができるスペシャリストです。
動画での学習と課題レポートの提出によって資格が取得できます。
大手美容クリニックの新人教育制度(例)
初めて美容クリニックに就職した看護師は、一般的な医療機関の雰囲気や仕事内容との違いに驚くことでしょう。
大手美容クリニックでは、美容医療の専門性と接客業としての側面とを両立させるため、充実した新人教育制度を設けています。ここでは、その一例を紹介します。
あるクリニックでは、新入社員は入社後、1~2ヶ月の基礎研修を受けます。この期間には基礎看護技術研修をはじめ、美容医療の基礎知識、ビジネスマナー、接客・接遇などを学びます。接客・接遇研修は一般病院ではあまり行われないものですが、サービス業としての側面が強い美容クリニックでは重視されています。
基礎研修が終わったら、臨床現場での研修が始まります。多くの美容クリニックでは「プリセプター制度」を採用しており、経験豊富な先輩看護師がマンツーマンで指導・フォローを行います。最初は見学からスタートし、徐々に簡単な施術の補助を経験しながら、数ヶ月かけて基本的な施術を自分で担当できるレベルまで成長していきます。
基本的スキルの習得後も、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後などの節目にフォローアップ研修が実施されます。これらは基本業務の習熟度チェックや新たなスキルの習得、より高度な技術の獲得をサポートするものです。
美容看護師に向いている人の特徴
ここからは、美容看護師に向いている人の特徴を紹介します。
まず、美容に興味がある人、新しい美容知識を得ることが好きな人は、美容看護師に向いています。美容医療は日々進化しており、新しい技術や施術方法、製品が次々と登場します。そのため、美容に関する情報を集めることが好きで楽しめる人は、美容看護師の仕事も向いているしょう。
また、接客やコミュニケーションが得意な人も美容看護師に適しています。美容クリニックは一般的な病院よりもサービス業の側面が強く、患者との関係構築が重要です。患者の希望や悩みをしっかりと聞き取り、適切な提案ができるコミュニケーション能力は欠かせません。
美容看護師の主な採用条件と面接のポイント
近年、美容クリニックの数が急増しており、美容医療は身近なものとなりつつあります。それに伴い、美容看護師を目指す人も増加しています。ここからは、美容看護師の主な採用条件と面接のポイントについて紹介します。
美容看護師として働くための基本的な採用条件は、看護師免許の保有のみです。臨床経験の有無はクリニックにより異なりますが、看護師として医療機関で働いた経験年数を問わない職場もあります。
美容クリニックの採用面接は、一般的な病院のものと比較すると、一般企業の採用試験に近い印象を持つ人も多いでしょう。とくに重視されるのは、以下の点です。
● 美容への関心:美容医療や美容全般に対する知識・興味はあるか
● 接遇スキル:言葉遣いや立ち振る舞い・態度
● コミュニケーション能力:スムーズな会話ができるか
● チームワーク:他のスタッフと協力して働く柔軟性があるか
● 学ぶ姿勢:新しい技術や知識を積極的に学ぶ意欲があるか
面接では、なぜ美容看護師を目指したのか、美容医療についてどのような知識や関心があるのかなど、具体的なエピソードを話せるよう準備しておきましょう。
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美容クリニック選びで注意すべきポイント
美容クリニックを探す際には、事前に職場環境や教育制度をしっかりと確認しておきましょう。とくに注意すべきは給与体系です。
多くの美容クリニックでは基本給に加えて、物販や施術の売上に応じたインセンティブ制度を設けています。これらはスタッフのモチベーション向上につながる一方、精神的なプレッシャーになる可能性もあります。
また、スタッフの年齢層や人間関係も重要なチェックポイントです。美容クリニックは一般的に若いスタッフが多い傾向がありますが、クリニックによって雰囲気は大きく異なります。可能であれば説明会や見学会に参加し、実際の雰囲気を体感することをおすすめします。
美容看護師の給料・年収の目安はいくら?
美容クリニックで働く看護師の年収は、450~600万円です。月給にすると30~40万円になります。
なお厚生労働省の調査によると、看護師全体の平均給与は508万円です。一般的な病院で勤務する看護師の多くは夜勤をしており、年収には夜勤手当も含まれています。一方、美容看護師には夜勤がほとんどないため、日勤のみで病棟看護師と同等またはそれ以上の収入が得られるのです。
美容看護師の収入が高い理由には、美容クリニックが自由診療を中心としていることが挙げられます。保険診療で利益を得る一般病院とは異なり、美容クリニックでは独自に料金設定ができるため、利益率が高くなるのです。
美容看護師の売上ノルマ・インセンティブ制度について
美容クリニックには、看護師の実績に応じてプラスαの報酬を支払う“インセンティブ制度”を導入しているところが多くあります。インセンティブ制度の具体的な内容には、以下が挙げられます。
● カウンセリングや施術の実績に応じた報酬
● 物品販売の成績に応じた報酬
● 患者からの指名料
また、院全体の売り上げが高かった場合に、スタッフに報酬として還元する「報酬金制度」を取り入れているところもあります。厳しいノルマを課するクリニックは少数派ですが、実績に応じてプラスの評価を行う職場は多いようです。
インセンティブ制度は自分の努力が直接収入に反映されるため、モチベーション向上につながります。その一方で、営業重視の環境は精神的なプレッシャーにもなりえます。転職先を選ぶ際には、自分自身の性格や理想の働き方に合った環境かどうか、十分に調べましょう。
美容看護師のキャリアプラン
美容看護師のキャリアプランは多岐に渡ります。
結婚や出産・育児などのライフステージの変化、同業の看護師からの偏見、適性の問題などにより、
美容看護師を辞めて臨床現場に戻る看護師もいます。「一度美容看護師になると臨床には復帰できないのでは」と不安に思う人もいるかもしれませんが、実際には、臨床現場への復帰は十分可能です。
キャリアアップの道として、“昇進”という選択肢もあります。経験を積むことで、各クリニックで看護主任、師長などの役職に就くチャンスが訪れるでしょう。
また、大手美容クリニックには“運営本部”が存在します。組織運営やマネジメント業務、成長戦略に関わる仕事をしてみたい人は、運営本部で働く道を目指すのもよいでしょう。
美容看護師に関するQ&A
Q.美容看護師の髪色・ネイルは自由?
美容クリニックの多くは、明るすぎない範囲でのカラーリングを許可しています。ただし、接遇の観点により、髪色の基準を設けているところもあります。
とくに外科系の施術を行うクリニックでは、衛生面や安全面からネイルケアを原則禁止としていることが多いものです。具体的な規定はクリニックによって異なります。面接時に確認しましょう。
Q.美容看護師に年齢制限はある?
年齢による採用制限は、原則禁止されているため、求人に年齢制限はありません。しかし、クリニックによっては容姿を重要視し、若手の看護師を好んで採用するところもあります。
また、美容外科手術の介助を行う看護師の場合には、年齢や容姿よりも手術に関する知識や経験、技術が重視されます。
Q.新卒で美容看護師になるのはむずかしい?
新卒で美容看護師を目指すと、将来的なキャリアの選択肢が少なくなります。
一方で、積極的に新卒採用を行っているクリニックも存在します。新卒で美容看護師に挑戦したい人は、きちんと教育制度を受けられるクリニックかどうか、リサーチしておきましょう。
Q.美容看護師から病棟看護師や訪問看護師にはなれる?
医療現場では、慢性的な看護師不足が続いています。基本的な看護技術を維持していれば、一度美容看護師になってから病棟看護師や訪問看護師など他分野へ転職することは十分可能です。
ただし、「美容クリニックでの経験年数」を「看護師としての経験年数」とカウントしてもらえないケースもあります。新たな職場に就職後は、新人として再スタートを切らなければならないことも考慮しておきましょう。
まとめ
この記事では、美容看護師の仕事内容や給料の目安、必要な資格、キャリアプランなどについて解説しました。
美容看護師は、医療と美容の専門知識を駆使して患者の美への願いに寄り添う職種で、やりがいのある仕事です。夜勤がなくても一般病院と同等またはそれ以上の収入が期待できる点も魅力的です。
美容への関心が高く、丁寧な施術と説明ができる人、自由診療のクリニックで働いてみたい人は、ぜひ挑戦してみてください。
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