地域包括ケア病棟とは|看護師の仕事内容や一般病棟との違いをわかりやすく解説

地域包括ケア病棟とは|看護師の仕事内容や一般病棟との違いをわかりやすく解説

超高齢社会といわれる現代、周囲のサポートを受けながら自宅で生活する人が増えています。地域包括ケア病棟では、急性期治療を終えた患者の在宅復帰に向け、きめ細かな医療とケアを提供します。地域包括ケア病棟は医療と地域をつなぐ重要な役割を担っているといえるでしょう。

この記事では、地域包括ケア病棟の基本的な役割から看護師の具体的な仕事内容、そこで働くうえでのやりがいまで、詳しく解説していきます。患者の在宅復帰のサポートに興味のある看護師は、参考にしてみてください。

地域包括ケア病棟とは

地域包括ケア病棟は、2014年度の診療報酬改定によって新設された病棟で、急性期治療を終えた患者の在宅復帰を支援する役割を担います。入院対象は、病状は安定しているものの、すぐに退院することがむずかしい患者、何らかの理由で一時的に入院しなければならなくなった在宅療養者です。

具体的には、次のような理由で地域包括ケア病棟を利用します。

 急性期病棟での治療は終えたが、引き続き療養が必要
 在宅復帰のために支援やリハビリが必要
 在宅療養をしているが、体調の悪化により入院が必要
 家庭の事情により、一時的に自宅で過ごすことがむずかしくなった

入院患者は高齢者の割合が多くを占めます。看護師は、個々の状況に応じた看護ケアやリハビリ、退院調整、退院に向けた指導を行います。

地域包括ケア病棟が担う3つの役割

地域包括ケア病棟は、患者のスムーズな在宅復帰・在宅療養支援を実現させるため、次の3つの重要な役割を担います。

 急性期治療を終えた患者の受け入れ
 急性期の治療を終えた患者を受け入れ、万全の状態で在宅復帰・社会復帰ができるよう、リハビリを実施します。

 在宅・社会生活への復帰支援
退院後の生活を見据え、ADLや家族の介護力などを考慮しながら目標を設定し、退院に向けた支援をしていきます。

 在宅療養がむずかしくなった場合の一時的な受け入れ
在宅療養中に体調を崩し、医療処置が必要となった場合の受け入れを行います。体調により急性期での治療が必要な場合には、地域包括ケア病棟ではなく一般病棟への入院となることもあります。

また地域包括ケア病棟では、ふだん自宅で介護している家族が何らかの理由で一時的に介護ができないとき、介護疲れがあるときに利用する“レスパイト入院”も受け入れています。

地域包括ケア病棟と一般病棟の違い

地域包括ケア病棟と一般病棟とでは、その目的や役割、設備基準などで異なる点があります。ここからはそれぞれの違いについて、詳しく解説していきます。

目的や役割の違い

一般病棟と地域包括ケア病棟とでは、目的や役割が異なります。

一般病棟は急性期の治療を行うことを目的としています。主な役割は、疾患や怪我による症状の改善を目的とした治療です。入院中は、手術や点滴、検査、服薬などの医療処置や治療を最優先に行います。

一方、地域包括ケア病棟は、患者が退院したあとに自分らしく生活できるよう、環境を整えたりADLを向上させたりすることを目的としています。看護師は医師・リハビリ専門職ら他職種とともに、退院後の生活を見据えた調整やリハビリを行います。自宅で介護する家族に対し必要な処置の指導を行ったり、訪問看護師やケアマネジャーと連携したりと、患者に関わる環境全体を整えることも、地域包括ケア病棟の役割のひとつです。

人員配置・設備基準の違い

地域包括ケア病棟と一般病棟では、人員配置や設備に関する基準が異なります。

厚生労働省では、病棟の役割や機能に応じてそれぞれ基準が細かく定めています。病院がこれらの基準を満たし、厚生労働局に届出をすると、診療報酬として、点数が加算されるのです。

病院の種類や大きさ、対象となる疾患などにより、施設基準は変わってきます。それぞれの施設基準の主な違いについて、表にまとめました。

一般病棟
(急性期一般入院料1の施設基準)
地域包括ケア病棟
(入院管理料1・2の施設基準)
看護職員7対113対1
看護補助者配置基準なし25対1以上
在院日数平均在院日数16日以内入院期間60日以内
在宅復帰率自宅等に退院する患者が80%以上
(介護老人保健施設・療養病棟を含む)
在宅復帰率72.5%以上
(分子に回リハ病棟への退院を含まない)
リハビリテーションの提供リハビリテーション要件なし1日2単位以上
リハビリ専門職配置基準なし 専従1名以上配置

上記のように、地域包括ケア病棟と一般病棟では、看護職員の配置数や受け入れる患者の入院日数に違いがあります。

また、地域包括ケア病棟では「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のいずれか1名以上を専従で配置すること」「1日2単位以上リハビリを提供すること」が要件として組み込まれています。自宅への退院に向けてADLの拡大を目指すことが必要とされるため、このような基準が設定されているのです。

参照元:
令和6年度診療報酬改定の概要 【入院Ⅱ(急性期・高度急性期入院医療)】
令和6年度診療報酬改定の概要 【入院Ⅰ(地域包括医療病棟)】

地域包括ケア病棟における看護師の役割

患者の在宅復帰を支援する地域包括ケア病棟。ここからは地域包括ケア病棟で働く看護師の役割を、大きく3つに分けて紹介します。

 患者の状態観察や看護ケアの提供
日々のバイタルサイン測定や投薬の処置、患者の病状に合わせたケアを行います。地域包括ケア病棟にはさまざまな疾患を抱える患者が入院しているため、幅広い知識が必要とされます。
患者の体調に異変があった場合には、医師に報告・相談し適切に対処します。

 在宅復帰を見据えたリハビリテーションの実施
退院後の生活を見据えて、リハビリテーションを行います。リハビリ担当のスタッフと連携し、入院生活の中で十分なリハビリができるよう、環境を整えたり、患者に働きかけたりすることも看護師の仕事です。

 他職種や家族との情報共有・調整
患者の家族や他職種と連携することも大切な役割です。患者の現状のADLや健康状態、精神状態などについて、関係者に看護師の目線で情報を共有します。 退院支援カンファレンスやリハビリカンファレンスなどに参加することもあります。

地域包括ケア病棟における看護師の仕事内容

地域包括ケア病棟での看護師の仕事は、患者の在宅復帰に向けた支援が中心となります。病棟により異なりますが、主に以下の業務を行います。

入院対応入院時オリエンテーション

情報収集(生活背景、現病歴、治療内容、日常生活動作、患者と家族が望む退院後の生活など)

健康管理バイタル測定

医療処置(与薬、処置、点滴管理など)

日常生活援助食事・入浴・排泄・病室の環境整備

日常生活動作のリハビリテーション

退院調整他職種との連携

家族への情報共有や不安の傾聴

各種カンファレンスへの参加

家族への手技指導(吸引・経管栄養など)

看護師の基本業務である健康管理や医療処置、日常生活管理は、一般病棟と同様に行います。それに加え、地域包括ケア病棟の看護師は、退院に向けて 他職種と連携したり、日常生活動作を通じてのリハビリや指導を行ったりと幅広く退院支援に関わります。

また、退院後の生活を見据え、地域のケアマネジャーや訪問看護師、介護福祉施設のスタッフなどを交えたカンファレンスに参加する機会も多くなります。

看護師(日勤)のスケジュールの例

地域包括ケア病棟における看護師の1日の業務の流れを紹介します。基本的な日勤のスケジュールは以下のとおりです。

時間業務内容
8:30申し送り・情報共有
9:00健康観察・処置・日常生活援助
10:00リハビリ室送迎・入院の受け入れ
12:00昼食介助・与薬・口腔ケア
14:00カンファレンス・記録・患者指導
16:00夕方の処置・健康観察
17:15申し送り・勤務終了

勤務先の病棟の仕組みや受け持ちの患者によりスケジュールは変わるため、上記はあくまで一例です。

地域包括ケア病棟は、原則、状態が安定した患者が入院するところです。そのため、手術出しやたくさんの点滴処置などはありません。基本的には午前中に患者の状態を観察したり、ケアを行ったりします。

カンファレンスや患者・家族への指導は午後から入ることが多いでしょう。

地域包括ケア病棟で働くことのメリットや魅力

地域包括ケア病棟で働くことには、どのような魅力があるのでしょうか。ここからは、看護師が同病棟で働くうえで感じられるやりがいや魅力について紹介します。

地域包括ケア病棟で働くメリットや魅力には、たとえば次のような点が挙げられます。

 患者の生活にじっくりと向き合う経験ができる
 患者や家族から感謝の言葉を直接聞くことができる
 他分野の専門家と連携し、専門知識を得られる
 急性期病棟に比べて時間に追われることが少ない

地域包括ケア病棟では、一般病棟と比べて、患者さんの生活背景を深く知る機会がたくさんあります。退院後の生活をイメージしながら看護を行うことで、「患者とじっくりと向き合っている」と実感できる場面が多いことでしょう。

ソーシャルワーカーやリハビリ専門職など、他職種と連携する機会が多く、他の分野の専門知識や異なる立場の考え方を学べることも、看護師としての成長につながります 。

また、比較的病状が落ち着いた患者が多いことから、急性期病棟のような慌ただしさが少なく、働きやすいというメリットもあります。

このように、看護師としての専門性を高めながら他職種とも関われること、ワークライフバランスを大切にできることは、地域包括ケア病棟で働くうえでの大きな魅力だといえるでしょう。

まとめ

この記事では、地域包括ケア病棟の役割や看護師の仕事内容、そこで働くやりがいや魅力について解説しました。

地域包括ケア病棟では、「退院して自宅で暮らしたい」という患者の願いを叶えるため、リハビリテーションや退院支援に重点を置いたサポートを行います。看護師はリハビリ専門職や福祉の専門家と力を合わせながら、患者の在宅復帰を支援する重要な役割を担います。

患者の生活に寄り添う看護がしたい看護師にとって、地域包括ケア病棟で働くことは、やりがいや魅力に満ちた選択肢であるといえるでしょう。

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