グローバル化の進む昨今 、看護師の活躍する場でも英語力が重宝されることが増えています。この記事では、看護師が仕事で英語力を活かすにあたり、 どのくらいのスキルが求められるのか、どんな職場で活躍できるのかを紹介します。英語力に自信のある看護師はもちろん、これからスキルを伸ばしていきたいと考えている人も参考にしてみてください。
看護師に求められる英語レベルはどのくらい?
看護師が英語力を活かせる職場はさまざまで、求められるレベルも仕事によって異なります。たとえば診療室を案内する程度であれば、身振り手振りを交えて伝えられれば問題ないでしょう。TOEIC®のスコアでは220~470点が目安です。
では外国人患者の診療の場ではどうでしょうか。通訳を介さずに来院した患者に対しては、看護師が体調不良やケガの詳細を聞き取ったり、それを医師に伝えたりすることになるでしょう。高い英語力が求められるため、TOEIC®のスコアでは730点以上は取得しておきたいところです。
参照元:IIBC|一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC® スコアとコミュニケーション能力レベルとの相関表」PDF
英語力を活かせる看護師の仕事
ここからは、医療機関で英語力が活かせる仕事を紹介します。
1:外国人患者受け入れ医療機関認証制度の認証病院
外国人患者受け入れ医療機関認証制度の認証病院とは、外国人患者を円滑に受け入れるための体制が整った病院のことで、国が推進する事業のひとつです。平成23年に厚生労働省が「外国人患者受入れ医療機関認証制度整備のための支援事業」として開始し、令和6年10月現在、69院が認証登録されています。この認証を受けている病院には、外国人患者の受け入れに対して中立・公平な立場で診療を行うことが求められます。
参照元:一般財団法人日本医療教育財団「外国人患者受け入れ医療機関認証制度」
参照元:一般財団法人日本医療教育財団「外国人患者受け入れ医療機関認証制度」認証医療機関一覧
認証制度の対象となる医療機関は、以下のように定義されています。
(1)病院または健診施設の医療機能を評価する評価項目を定めている。
(2)所定の研修カリキュラムによって養成された調査員により、評価項目に沿った調査(実地調査を含む)が実施されている。
(3)調査結果に基づき、第三者からなる認証審査機関によって認証の是非が審議されている。
引用元:一般財団法人日本医療教育財団「外国人患者受け入れ医療機関認証制度」外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)について
外国人患者を受け入れる環境が整っているという点をのぞけば、医療設備や診療体制は一般的な医療機関と変わりません。
看護師の仕事も一般の病院・クリニックで働く看護師と同様に、 外来での診療補助・検査介助、病棟での療養の世話などです。
2:EPA外国人看護師を受け入れている病院
日本ではインドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国とそれぞれ “経済連携協定”を結び、外国人看護師・介護福祉士候補者の受け入れを行っています。令和元年8月末時点で、3か国合わせた看護師・介護福祉士候補者は6,400名にのぼります。候補者たちが日本の国家資格を取得した後は、日本国内の医療機関や介護福祉施設で働くことができます。とはいえ日本に居住し、看護や介護について学んでも、日本語はまだおぼつかないという人も少なくありません。 外国人看護師を積極的に受け入れている病院では、英語の堪能な日本人看護師も、彼らのサポーターとして重宝されることでしょう。
参照元:厚生労働省「インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて」
参考:公益社団法人国際厚生事業団 JICWELS「EPA受入れ事例」
3:美容クリニック
高い美容医療技術を求め、日本の美容クリニックを受診する外国人は年々増加しています。英語は世界的に話す人が多い言語。そこで英語の話せる看護師 を求める美容クリニックも多いのです。
美容クリニックに来院する外国人は、旅行ではなく美容医療を受けることを目的に日本を訪れています。そのため重篤な症状を抱えて来院するということはありません。看護師に求められる英語力もハイレベルなものではなく、日常会話レベルが目安です。
4:大都市・観光地にある病院
大きな都市や観光地には多くの外国人観光客が訪れます。人が多い場所はその分、トラブルや事故も起きやすくなるもの。体調不良やケガで医療機関の受診を余儀なくされる人も多いのです。そうした土地にある医療機関では、患者と接する機会の多い看護師に英語力を求める傾向にあります。外国人観光客の日本語の理解度は人それぞれです。なかには日本語がほとんどわからない人もいるでしょう 。そのため看護師にも比較的高いレベルの英語力が求められます 。
5:空港内にあるクリニック
空港内にあるクリニックは、主に入国・出国の際に体調を崩した人が利用します。外国人も多く来院するため 、英語を話せる看護師の力が必要です。また空港利用客だけでなく、空港内で働く人たちも来院します。診療内容は一般外来診療や健康診断、ワクチン接種、新型コロナウイルスの検査などで、看護師の仕事内容は一般的なクリニックと大差ないでしょう。
6:英語対応を行っている病院・インターナショナルクリニック
外国人患者受け入れ医療機関認証制度の認証病院以外でも、英語対応を行う医療機関は多くあります 。とくに英語対応に注力する病院やインターナショナルクリニックでは、医師が外国語に精通しているほか、海外の医療機関と連携体制を築いているところも多いようです。日常的に英語に触れられるため、英語力の高い看護師はもちろん、英語力を磨きたい人にとっても魅力的な環境といえるでしょう。
7:健診・人間ドック専門クリニック
健康診断センターや人間ドック専門クリニックも外国人が多く訪れる場です。日本で働く外国人は労働安全衛生法により、健康診断を受けるよう定められています。日本で働いているといっても、日本語があまりわからない外国人は多くいます。日本語がわかる外国人も、医療機関で必要な日本語まで理解できるとは限りません。そのため英語の通じる看護師は心強い存在です。
日本の人間ドックは中国などアジア圏の富裕層に人気があり、人間ドックを受診するためのツアーも組まれるほどです。それは日本の高い医療技術を信頼してのこと。美容クリニックの受診と同様に、重篤な症状があって訪れるわけではありません。とはいえ日本語がわからない人も多く、人間ドック専門クリニックでも英語の話せる看護師は重宝されます。
病院以外で看護師が英語力を活かせる職場
看護師の活躍の場は、医療機関だけではありません。なかには英語力を発揮できる職場も多くあります。
1:プリスクール(保育園)・インターナショナルスクール
プリスクールとは乳幼児向けに英語教育を行う保育施設のことで、対象は0歳から未就学児です。インターナショナルスクールは5歳から18歳までの子どもが通います。「海外から引っ越してきた家庭の子どもたちが通う学校」と考えるとわかりやすいでしょう。どちらのスクールでも看護師の主な仕事内容は子どもたちの健康管理で、“保健室の先生”のような役割を担います。
大きな違いはプリスクールでは英語力はあまり求められないのに対し、インターナショナルスクールでは英語力が求められることです。インターナショナルスクールに通う子どもたちは、英語に慣れ親しんできた子がほとんど。まだ日本語よりも英語のほうが得意な子も多く、スクール内では英語が飛び交っています。体調不良の内容やケガの詳細を 聞き取るにも、英語力が高いに越したことはありません。英語でのコミュニケーションが問題なくできる力が身に付いていると良いでしょう。なお医療英語が必要とされる場面は少なく、比較的チャレンジしやすい仕事といえます。
2:シップナース(船内看護師)
シップナースは船旅に添乗する看護師です。クルーズ船や世界一周旅行客を乗せる船 、豪華客船などが主な職場となります。乗船中に体調不良やケガに見舞われた旅客や従業員の応急処置を行います。
シップナースになるには、海運会社に入社したり、クルーズ会社と契約したりすることになります。看護師資格のほか、英語力と医療英語が求められます。日本人客の多い船では日常会話レベルで問題ありませんが、外国人客の多い船ではネイティブスピーカーレベルの英語力が必要です。また救急外来や集中治療室での勤務経験を求められる現場もあるようです。
3:メディカル・エスコート・サービス(外国人船員対象の医療相談)
メディカル・エスコート・サービスは、外国人船員を対象に医療面での相談対応を行う仕事です。具体的には、港に入港する船の従業員への問診や医療機関の紹介など。体調不良を訴える船員がいる場合は、医療機関の受診に付き添うこともあります。
必要な英語レベルは日常会話程度で、医療英語のスキルが求められるケースは少なめです。正社員の募集は少なく、パートやアルバイト、派遣社員の求人が大半です。
4:ツアーナース(旅行の添乗)
ツアーナースは旅行に同行する看護師のことです。企業の団体旅行や学校の修学旅行といった大人数の旅行に付き添うことが多く、日本国内はもちろん、海外旅行にも添乗します。英語力は日常会話レベルで問題なく、医療英語のスキルも必須ではありません。英語力の活かせる職場のなかでも、比較的チャレンジしやすい仕事です。
メディカル・エスコート・サービス同様、求人は単発バイトや派遣社員・単発派遣が主流で、副業・Wワークの仕事を探す人に人気があります。
5:イベントナース
イベントナースは、スポーツの大会やライブ会場などで活躍する看護師です。日本国内で行われるイベントのなかにも、国際的な大会や国内外から参加者が集うものはたくさんあります。そうした会場には救護室や医務室が用意されています。
また、国際カンファレンスや展示会・展覧会など、政府が主催するイベントには要人が参加することが多く、リスク管理の一環として英語力のある看護師が配置されています。とはいえ、もしもの事態に備える仕事のため、高い医療英語スキルは求められません。日常会話が難なくこなせる人であれば心配はいらないでしょう。
6:テーマパーク
スポーツ大会やイベント と同じく、テーマパークにも国内外から多くの人が訪れます。 とくに人気のテーマパークには外国人観光客もたくさん。テーマパークの看護師は基本的に救護室に待機 し、体調不良やケガをした人の手当を行います。英語スキルは必須ではありませんが、日常会話レベルの英語力が身に付いていると転職時の大きなアピールとなります。
7:治験関連・製薬会社
治験を行う現場や製薬会社では、海外メーカーの医薬品を扱うことも多くあります。そのため治験関連の職場や製薬会社で働くには、医療や医薬品知識にくわえて英語力もあるスタッフが重宝されます。
医療・医薬品の知識に明るい看護師は、会社にとって非常に頼れる存在です。実際に、CRA(臨床開発モニター)やCRC(治験コーディネーター)には看護師資格を持っている人も多くいます。応募に英語力や医療英語のスキルは必須ではありませんが、あれば大きな強みとなります。
まとめ
英語が活かせる職場で働きたいと考えている看護師の中にも、「英語を活かせる看護の仕事ってそんなになさそう」と考えている人もいるのではないでしょうか。看護師が英語を活かして活躍できる仕事は、身近なものから聞きなれないものまで実はたくさんあります。
「得意の英語を活かして働きたい」「外国人をサポートできる仕事に憧れている」という人は、具体的な応募先を決めるにあたり、自身の求める条件と仕事内容や必要とされるスキルが合っているか、深くリサーチしてみることをオススメします。「今よりもっと英語力が活かせる職場を探している」という人は、医療英語が活きる職場に転職するのも良いかもしれません。
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