HCUとは?ICUとの違いや看護師の仕事内容を解説

HCU(高度治療室)には、重症化や急変のリスクが高く、命に危険のある患者が多く入院しています。とはいっても、高度医療を提供する医療機関の中には、ICUやSICUなど似た役割のある病床も多く、どのような違いがあるのかよく理解できていない人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、HCUの概要やICUとの違い、HCUの看護師の役割と業務内容、向いている人の特徴について解説します。HCUの看護師に求められることも伝えるので、参考にしてください。

HCU(高度治療室)とは

HCUの特徴や概要、ICUとの違いを解説します。

一般病棟とICUの中間病床

HCUとは「High Care Unit」の略で、高度治療室のことを指します。一般病棟とICU(集中治療室)の中間にあたり、重症化や急変のリスクの高い患者や手術後の管理が必要な患者を受け入れ、安全で質の高い医療サービスの提供、高度な看護を実践します。

HCUでは、ICUでの超急性期治療によって病状が回復した患者や一般病棟での治療では不十分な患者のケアを行います。なお、急性期だけでなく回復期や終末期の患者も対象です。

また、HCUでは医師や看護師のほか、臨床工学技士や薬剤師・理学療法士・栄養士・ソーシャルワーカーなど、多職種が連携して患者のケアにあたります。

HCUの用途/役割

HCUへは、救急外来や手術室から直接入室する場合、ICUから移動してくる場合などがあります。患者の回復状態によって、ICUからHCUへ入室し、一般病棟へ移動するのが一般的な流れです。

例えば、HCUでは診療報酬の加算日数が21日までに設定されています。なお、ICUの加算日数は14日です。そのため、ICUで14日間治療しても全身状態が不安定な場合、HCUに移動後7日間治療を行い、一般病棟へ転室させるという流れになります。

HCUでは、ハイリスクな状態からの救命だけでなく、早期回復や社会復帰を目標に、手厚い治療を提供します。

HCU入室対象となる疾患・状態

HCUには、診療科目を問わず、さまざまな疾患の患者が入院しています。HCUの入室対象となる疾患・状態は、主に以下のとおりです。

 急性心不全
 心筋梗塞
 大動脈解離
 脳血管障害 (くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)
 意識障害
 心肺蘇生後
 ハイリスクな手術後の管理(肺がん、血管バイパス術など)
 救急疾患(多発外傷、中毒など)
 人工呼吸器管理、透析治療などの集中治療を要する場合

重症化のリスクや、大きな手術後の経過観察を必要とする患者がHCUの入室対象です。医療機関によって、HCUの入室基準は異なるため、上記に該当する患者でも急変のリスクが低い場合、一般病棟に入院する場合があります。

ICU(集中治療室)との違い

ICUは「Intensive Care Unit」の略で、集中治療室のことです。HCUと比べて命の危険性が高く、医師、看護師による24時間体制でのより高度な治療や看護を必要とする患者が入室します。

日本集中治療医学会では、ICUを以下のように定義しています。

”集中治療のために濃密な診療体制とモニタリング用機器、また生命維持装置などの高度の診療機器を整備した診療空間”

出典:日本集中治療医学会

ICUに入室している患者は重症度が高く、いつ急変するか分からない状態にあります。そのため患者2名に対し、看護師1名と手厚い看護配置基準になっています。一方、HCUでは重篤な状態を脱している患者を対象とするため、患者4名に対し、看護師1名の配置です。

また、ICUではベッド上安静が必要な患者が大半ですが、HCUには歩行可能な患者もいます。

HCUに携わる職種とは

HCUでは、ハイリスクな患者の早期回復・退院を支援すべく、主に以下の職種が携わっています。

 看護師
 医師
 薬剤師
 理学療法士
 退院支援看護師

HCUでは、入室早期から多職種が連携し、患者の治療計画・看護計画・リハビリ計画・退院支援計画などの検討、評価を行います。
医療機関の規模によっては、栄養士・歯科衛生士・セラピストなど、多くの職種がかかわるケースもあります。HCUに携わる職種は、HCU以外の集中治療室(ICUなど)の設備があるかどうかで異なります。

例えば、ICU設備がなかったり、あったとしても病床数が足りなかったりする場合、重症度の高い患者をHCUで受け入れなければならない状況になる可能性もゼロではありません。その場合、本来であればICUで使用するような医療機器の管理が必要となり、臨床工学技士などもHCUに携わることになるでしょう。

HCUの看護師の役割と業務内容

HCUの看護師の役割は、以下5つです。

 医療機器の管理・容態のモニタリング
 異常・急変対応
 日常的ケア
 心理的ケア
 一般病棟への転棟や退院支援

それぞれ解説します。

医療機器の管理・容態のモニタリング

HCUの看護師にとって、患者を取り巻く医療機器の管理やモニタリングは重要な役割です。

HCUに入室している患者は重症度が高く、心電図モニターや人工呼吸器など、循環動態を管理するための医療機器が装着されていることがほとんどです。医療機器の設定は患者に適しているか、誤作動はないかなど、正確に把握する必要があるでしょう。

また、医療機器の波形や数値だけで判断せず、五感を使って患者の状態観察を行う力も求められます。

異常・急変対応

患者の状態に異変がある場合、まずは医師への迅速かつ正確な報告をしなければなりません。医師の指示のもと、採血などの処置や投薬・補液、輸血などの処置を行います。必要に応じて、心臓マッサージや挿管介助などの救命処置も担います。

日常的ケア

HCUでは全介助の患者が多く、全身清拭やオムツ交換などの日常生活上のケアも看護師の役割です。

ICUに比べて重症度が低いため、歩行可能な患者がいることもあります。歩行器などを使用している場合、側で見守ったり、膝折れしないよう支えたり、転倒防止のための対策なども必要とされるでしょう。

心理的ケア

患者や家族に対する心理的ケアも、HCUの看護師の大きな役割だといえます。

重症度や急変のリスクが高いHCUに入室している患者やその家族は、今後の見通しに対する不安を強く抱いているため、精神的な関わりが求められます。

特に急変時は、突然の連絡に動揺する家族は少なくありません。生命の危機に直面した患者の家族に対する心理的サポートも重要な役割の1つです。

一般病棟への転棟や退院支援

患者の状態や回復状況に合わせて、一般病棟への転棟や退院へ向けた支援を行います。

状況によって、医師にリハビリオーダーを依頼し、理学療法士に介入してもらう必要があるでしょう。また、入院時からソーシャルワーカーに介入してもらい、早期からの退院調整を行うこともあります。転棟の際は、一般病棟の看護師へ、病状や今後の方針などの申し送りを行います。

HCUの看護師に向いている人の特徴

HCUでは、患者の状態が急を要する状況となった場合でも、冷静かつ迅速に対応できる能力が求められます。患者の少しの変化を敏感に捉える洞察力と、即座の判断力が必要不可欠です。また、医師の指示のもと、適切な処置を行うためのスピード感のある対応力が必要とされます。

こうした状況は、ストレスを伴うことが少なくありません。そのため、HCUで働く看護師には、心身ともにタフで、予期せぬ事態も冷静に対応できる強さも求められます。

さらに、HCUで働く看護師には、学び続ける姿勢も大切です。医療業界において、治療技術や医療機器は常に進化しています。患者に最適なケアを提供するためにも、自ら学び続ける姿勢を持つことはもちろん、自ら研修や勉強会に参加するなど、積極的な学びが重要です。

HCUの看護師に求められること

HCUの看護師に求められることは、主に以下の通りです。

 判断力・観察力
 学習意欲
 体力
 精神的な強さ

それぞれ解説します。

判断力・観察力

HCUでは、患者の状態を常に観察し、異変時には迅速な対応力が求められます。例えば、心電図モニター波形が変化した場合、医師への連絡が必要な状況かどうか、速やかに判断しなければなりません。

患者の意識レベルが低下した場合、血圧に変動はないか、瞳孔の左右差や麻痺・痙攣はないかなどを観察したのち、医師へ速やかに報告する必要があります。患者に適した治療を提供するために、迅速な観察力や判断力は必要不可欠です。

学習意欲

HCUには診療科目を問わず、さまざまな疾患の患者が入院しているため、看護師にも幅広い知識や処置技術が求められます。

HCUでは人工呼吸器をはじめ、多くの医療機器を用いる患者の看護に関わることになります。医療機器や治療法は進化し続けているため、常に知識や技術を学んでいく積極性が必要だといえるでしょう。

体力

HCUは緊急入院の受け入れや急変の対応など、予定外の処置や対応が必要となるケースが少なくありません。また、意識レベルの低い患者や体動困難な患者も多く、ハードな業務となる傾向にあります。

そのため、HCUで働く看護師には、十分な体力が欠かせません。

精神的な強さ

HCUで働く看護師には、精神的な強さが求められます。HCUには、重症度や急変のリスクが高い患者が多く、今までの治療や看護をしても報われないこともあり、精神的なストレスを抱きやすいでしょう。

また、忙しい業務のなかでも勉強しなくてはならず、休日もゆっくり休めないことも考えられます。精神的な強さやストレスマネジメントは必須といえます。

HCUにおける看護師のやりがい

HCUで働く看護師のやりがいは、患者が緊急を要する状態から脱し、回復する過程を間近で支えられることにあります。医師と共に、日々の細やかな観察とケアを行ったり、薬剤師や理学療法士らと連携し、患者の状態が改善につながったりすれば、大きなやりがいが感じられるでしょう。

HCUでは、一般病棟に比べて専門的な知識を学べる機会が多く、自身のスキルアップにもつながります。緊急対応の経験は、看護師として働くうえでの自信にもなるでしょう。

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まとめ

この記事では、HCUの概要やICUとの違い、HCUの看護師の役割と業務内容、向いている人の特徴、HCUで働く看護師に求められることについてお伝えしました。

HCUは、ICUと一般病棟の中間に位置し、重症化や急変のリスクの高い患者や、手術後の管理が必要な患者に対し、安全で質の高い医療サービスや看護ケアを提供する病棟です。

ICUに比べて重症度は低いとはいえ、いつ急変するか分からない患者が入室している場合もあります。そのため、さまざまな疾患や医療機器に対する知識を習得し、急変や状態の変化に対応できるスキルが必要だといえるでしょう。

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