看護師は、病院やクリニックで働く職種というイメージを持つ人が多いでしょう。しかし、病院やクリニック以外にも、看護師資格が役に立つ職場はたくさんあります。
この記事では、看護師がステップアップした際の働き方や、看護師資格が使える珍しい働き方を紹介しています。病院での勤務がつらい人や、幅広い分野でスキルアップしたいと考える人は、参考にしてみてください。
看護師からステップアップする求人
看護職は、経験を積んだり上位資格や専門資格を取ったりすることにより、通常の看護師業務からステップアップした仕事に就くこともできます。具体的には、次のような仕事です。
● 保健師
● 助産師
● 看護学校の教員
それぞれの仕事の特徴を紹介します。
保健師
保健師は、病気や怪我の予防を目的とし、健康の維持・増進のためにさまざまな活動を行う職種です。病気や怪我をする可能性のある人々に、予防の知識を提供したり、指導をしたりする役割を担います。保健所や保健センター、企業などに勤務し、個人の保健指導だけではなく、コミュニティ単位での健康増進を図る活動を行っています。
保健師は看護師資格と保健師資格のふたつの国家資格を持つ職種です。保健師資格を取得するためには、看護師資格を取得し、1〜2年間の保健師養成課程を経て保健師国家試験に合格する必要があります。
助産師
助産師は妊婦や産婦・新生児のケアや、女性のライフステージに応じた保健指導を行う職種です。病院以外にも助産院や保健センターなど、母子に関わるさまざまな場所で勤務します。母子に幅広く関わる助産師の業務は、次のように多岐にわたります。
● 分娩介助
● 妊婦の健康管理や生活指導をする助産師外来
● 妊婦の家族に対する指導
● 出産後の母親への産後ケア など
海外では男性助産師が活躍している国がありますが、現状の日本では助産師になれるのは女性のみです。助産師の資格を取得するには、看護師資格の取得後、所定の養成機関で1~2年履修し、資格取得試験に合格しなければなりません。
看護学校
看護系大学や看護専門学校の先生として勤務し、学生に看護学を指導する働き方もあります。講義はもちろん、テストの作成や採点、レポートの添削や学生の評価など、学業に伴うともなう業務全般を担う仕事です。
学内実習や病棟実習の指導や付き添いも行います。幅広い業務にたずさわる一方、看護業務を行うことはなくなるため、自分自身の技術向上にはつながりにくいという特徴もあります。
看護教員になるためには、5年以上の臨床経験が必要です。さらに、大学で教育に関する科目を履修し卒業するか、看護教員養成講習会の講習を受講しなければなりません。
医療・福祉関係の求人
次に、看護師が働ける病院以外の医療・福祉関係の職場について紹介します。
● 保育園
● 介護施設
● 治験コーディネーター
● 医療機器メーカー(フィールドナース)
どれも看護師としての知識や臨床経験を生かして働ける職場です。
保育園
保育園の中には、園児の健康管理のために看護師を配置しているところが多くあります。保育園での看護師の役割は、子どもたちの健康状態の確認、怪我や体調不良への対応です。子どもが発熱したり、怪我をしたりしたときには応急処置を施すほか、保護者への連絡や嘱託医との連携も行います。
勤務する園によっては、保育士としての業務も担います。園の衛生管理や健康診断の段取り組み、「ほけんだより」の作成、保護者に向けた保健指導も業務のひとつです。
急変や緊急時の対応は稀ですが、園長やベテラン保育士が一緒に対応するため、一人で判断することはありません。小児看護の経験がなくても子どもが好きな人や子育て経験のある人は活躍できるでしょう。
介護施設
多くの介護施設では、入居者やサービス利用者の健康管理のために看護師を配置しています。
● デイサービス
● 特別養護老人ホーム
● ケアハウス
● 介護老人保健施設 など
上記のように、介護施設には幅広い形態があり、求められる医療処置の内容や頻度も施設により異なります。
介護施設で働く看護師は、利用者や入居者の健康管理や医療的ケア、緊急時の対応を行います。介護職員と一緒に入浴や食事の介助など、日常生活のサポートを行うこともあるでしょう。デイサービスの場合は日勤のみの勤務ですが、長期入所施設の場合、夜勤がある職場もあります。
治験コーディネーター
治験コーディネーターは、製薬会社と医療機関、治験対象者をつなぎ、治験業務全般をサポートする仕事です。製薬会社や治験支援機関に在籍し、治験についての資料作成やスケジュール管理、治験協力者への説明やケア、医師のサポートなどを行います。
治験コーディネーターの仕事に就くには、看護師の資格は必須ではありません。しかし、疾患や薬剤についての知識が必要となるため、看護師免許や薬剤師免許などの資格、臨床経験があると優遇されます。
医療機器メーカー(フィールドナース)
医療機器メーカーで働く看護師は、「フィールドナース」や「クリニカルスペシャリスト」とも呼ばれます。医師や看護師などの医療従事者に向けた自社の商品のプレゼンテーションやデモンストレーション、アフターサポートが主な仕事です。自社の商品について誰よりも詳しくなるとともに、現場の状況を把握し、スタッフからの質問や要望に確実に対応することが求められます。
手術室や救急治療の場面で取り扱う医療機器が多いため、手術室や救急外来での経験が役立ちます。プレゼンテーションが得意な人や、人前で話すことが好きな人に向いています。
一般企業の求人
一般企業にも、看護師資格を活かして働ける求人があります。
● 産業保健師
● ホテル
● テーマパーク
● コールセンター(テレフォンオペレーター)
会社員としての働き方に興味がある人は、参考にしてみてください。
産業保健師
産業保健師は企業の医務室や人事課に勤務し、従業員の健康増進や、病気の予防に関する健康管理を行う職種です。従業員の健康を維持し、それぞれが高い生産性を維持しながら長く勤められるようサポートします。
具体的な業務内容は、健康診断のスケジューリング、健康診断後の健康指導やメンタルヘルス管理、急な怪我や病気の応急処置などです。基本的に日勤のみ、土日は休みの場合が多いので、プライベートの時間を確保しながら働きやすいという特徴があります。
保健師の勤務先として人気のある職種です。求人数が少ないため競争率は高くなります。
ホテル
ホテルにも看護師の求人があります。宿泊客やスタッフの怪我・急病の対応や、救急車の要請、病院への付き添いが主な業務です。
医務室を設置し看護師を在駐させているホテルから、宿泊客の多い夏休みや春休み、年末年始のみ求人を募集しているホテルまで、勤務期間や条件はさまざまです。仕事自体はそこまで忙しくなく比較的高収入が得られます。期間限定の仕事をしたい人や、初対面の人とのコミュニケーションが好きな人におすすめです。
テーマパーク
救護センターを配置しているテーマパークでは、看護師を募集しています。テーマパークでの看護師は「ナースクルー」や「ナースキャスト」と呼ばれることもあります。主に救護センターに在駐し、怪我や体調が悪くなった利用客の応急処置を行います。
施設の営業時間にもよりますが、基本的には日勤のみの勤務形態が多いでしょう。テーマパークが混み合う夏休みなどの長期休暇や連休には、アルバイトで働く看護師も多く募集されるため、働けるチャンスも増えます。
テーマパークで勤務してみたい人は連休や長期休暇の前に求人を探してみましょう。
コールセンター(テレフォンオペレーター)
コールセンターにも、看護師の求人が出されることがあります。医療機器メーカーや製薬会社など、医療に関する製品・サービスを扱う会社では、利用客からの問い合わせに対応しやすくなるよう、テレフォンオペレーターとして看護師を配置しているためです。
テレフォンオペレーターとして働くためには、健康や病気、医薬品についてなど、医療に関する質問に電話口で素早く対応するスキルが必要です。生命保険会社による看護師への相談サービスや、新型コロナウイルスの相談窓口など、勤務先により仕事の内容は多岐にわたります。
コールセンターの仕事は平日の日中のみの場合が多いですが、24時間対応している企業の場合には夜勤があります。
公的な求人
看護師は公的機関で働くことも可能です。病院とはまったく異なる分野の専門性が求められるため、自分自身の経験や知識を生かしながら、新たなことに挑戦したい人におすすめです。
● 厚生労働省(看護系技官)
● 自衛隊
● 刑務所
● 運転免許センター
それぞれ紹介します。
厚生労働省(看護系技官)
厚生労働省では、看護師資格を持つ人を看護系技官として採用しています。看護系技官は、大臣官房や医政局・健康局・労働基準局などに配属され、診療報酬や看護教育の見直しなどさまざまな業務を行います。具体的な業務内容は配属先により異なりますが、看護や医療の現場に大きな影響を与える仕事です。
看護系技官として働くためには、看護系大学または看護系大学院を卒業・修了し、7年以上看護師として実務経験を積む必要があります。さらに、保健師または助産師資格の取得が必須とされています。
自衛隊
「特別職国家公務員」として自衛隊に所属し活躍する看護師もいます。自衛隊で働く看護師には、次の2種類の仕事があります。
● 自衛官看護師
● 技官看護師
自衛官看護師は自衛隊員の一員として、ほかの自衛官と同様に普段から戦闘訓練や射撃訓練などを行います。一方、技官看護師は自衛隊病院や防衛医科大学校病院に勤務し、一般的な病院勤務の看護師と同じ業務をこなします。
自衛隊で働く看護師になるためには、年齢制限や厳しい身体検査などさまざまな条件をクリアしなければなりません。難易度は高いですが、国のために働くやりがいのある仕事であるといえます。
刑務所
刑務所で働く看護師は、受刑者の健康管理、病気や怪我の対応などを行います。刑事施設にある一般刑務所、全国に4ヶ所ある医療刑務所のどちらかに勤務します。
医療刑務所とは、受刑中に身体的または精神的に疾患を抱え、治療が必要であると判断された受刑者のための医療施設です。医療刑務所では一般的な病院と同じような看護師としての働き方となり、夜勤もあります。
対象者が受刑者であることから、安全のために看護師一人では対応せず、必ず刑務官や法務教官が付き添います。
運転免許センター
運転免許センターでは、高齢ドライバーの認知機能や運動能力に支障がないかどうかを医療従事者目線で判断するため、看護師を配置しているところがあります。
看護師は、高齢ドライバーの運転適性相談や認知症の簡易検査など、運転に関するサポートやアドバイスなどを実施します。疾患や障がいを抱える人が安全に運転できるかどうかを判断するサポートや、疾患と運転を関連付けた質問をして情報収集することも役割のひとつです。
場合によっては、免許返納を促したり医療機関の受診を勧めたりすることもあります。
高齢ドライバーの増加にともない、需要が増えてきている仕事です。
旅行・観光に関する求人
旅行や観光・イベントに関わる看護師の仕事を紹介します。
● シップナース
● イベントナース
● ツアーナース
● 空港(エアポートナース)
旅行やイベントが好きな人におすすめの働き方です。
シップナース
シップナースとは、長期間航海する旅客船やクルーズ船の医務室で働く看護師のことです。数日~数ヶ月と長い期間航海する旅客船の乗客や乗務員の急な怪我や病気への対応、健康相談が業務の中心となります。
船の上では傷病者が出てもすぐに受診できないため、臨機応変に対応する能力が求められます。救急外来での勤務経験がある人は優遇されやすいでしょう。また、海外へ行く豪華客船では外国人の旅客がいたり、現地の医療機関に傷病者の付き添いとして出向いたりする場合があるため、英会話の能力が必須です。
イベントナース
スポーツ大会やコンサート会場、祭りなど、イベントの会場で働く看護師はイベントナースと呼ばれます。イベントナースは、会場に設置される医務室で、来場者や参加者の応急処置を担います。
イベント当日だけの勤務となるため、求人の多くは単発的なアルバイトの仕事です。副業として仕事が休みの日にお小遣い稼ぎをしたい人、家事や育児の合間に単発で仕事に入りたい人におすすめです。
ツアーナース
ツアーナースとは、修学旅行や社員旅行などに同行する看護師のことです。主にツアー参加者の怪我や急病への対応、搬送時の付き添いなどの役割を担います。持病や障がいがあり外出に不安がある人に付き添い、旅行をサポートすることもあります。旅行客が安全に旅行を楽しめるよう、旅行前に主催者と一緒にスケジュールや参加者の健康状態の確認、打ち合わせも行います。
旅行の規模にもよりますが、看護師一人で参加者の怪我や病気に対応する必要があり、冷静な判断力と対応力が求められます。観光地や名所に足を運ぶことができるため、旅行が好きな人に人気の仕事です。
空港(エアポートナース)
エアポートナースは、空港で働く看護師です。働き方には次の2種類があります。
● 空港内のクリニックに勤務する
● 検疫官として働く
日本の空港の中には、クリニックが入っているところが複数あります。クリニックでは空港内で怪我をしたり、体調不良になったりした人の診察や治療を行います。看護師の仕事は、一般的な看護師の業務と変わりません。一方、検疫官として働く看護師は、検疫業務や衛生調査・健康相談・予防接種などを実施します。
空港には国内外の人が多く訪れるため、外国語を使える能力や、状況に合わせて適切な判断ができる対応力が求められます。
まとめ
この記事では、看護師がステップアップした際の働き方や、看護師資格が使える珍しい働き方を紹介しました。
看護師は、病院やクリニック以外にも多くの現場で活躍できます。看護師の資格や経験、知識を生かして病院以外で働いてみたい人は、チャレンジしてみてください。
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