病院・介護施設・訪問看護ステーション・地域包括支援センターなどで、看護師と共に働くことも多い「ケアマネジャー」。今回は、ふだんケアマネジャーがどんなことをしているのか、ケアマネジャーになるにはどうしたらいいのかを解説していきます。
看護師資格にプラスして資格取得を考えている人も参考にしてみてください。
ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?
ケアマネジャーは介護保険に関する専門家で、「介護支援専門員」とも呼ばれます。要介護・要支援認定を受けた人のケアマネジメントを行います。具体的な仕事内容は、ケアプランの作成や介護サービス事業者との連絡・調整など。介護を必要とする人の暮らしができる限り自立したものとなるよう支援します。超高齢社会の現代日本において、ケアマネジャーは介護をする側・される側、双方にとってなくてはならない存在です。
ケアマネジャーには居宅介護支援事業所に所属する「居宅ケアマネジャー」と、介護福祉施設などに在籍する「施設ケアマネジャー」がいます。現場は異なりますが、役割はいずれも、要支援・要介護認定を受けた人が適切なケアを受けられるよう支援すること。社会保険サービスや地域資源を駆使し、「住み慣れた自宅や地域で暮らしたい」という想いに応えるケアマネジャーは、地域の介護支援の根幹を担うスペシャリストともいえます。
ケアマネジャーの仕事内容
1.ケアプランの作成
介護を受ける本人やその家族から相談・依頼を受け、一人ひとりの心身の状態や生活背景に応じたケアプランを作成。何で困っているのか、何を必要としているのかを正しく見極め、適切なサービスが受けられるよう介護計画を立てます。
実際に介護サービスの利用がスタートしてからも、定期的な訪問・聞き取り調査を実施。サービスの活用状況や改善点を把握・確認し、それに合わせてケアプランも見直していきます。
2.介護サービス事業所と利用者間の調整業務
利用者の困りごとや相談内容に合わせたサービスを紹介。利用するサービスが決定したら、利用者と自治体や介護サービス事業者の間に入り連絡・調整も実施。利用者・家族の不安を払拭し、安心してサービスが利用開始できるようサポートします。
また利用者が入院した際は医療機関とも連携を取りながら、退院後のサービス利用再開や住まいの環境整備といった面のアドバイスを行います。
3.介護給付の管理業務
居宅介護支援事業所などの介護サービス事業者は、利用者の介護保険サービス利用に基づき、公法人「国民健康保険団体連合会」に対して介護給付費を請求する必要があります。その際ケアマネジャーは、介護費用や支援費用を管理する業務を担当。サービスの利用実績を確認し、給付に必要な書類の作成や提出といった事務手続きを行います。
ケアマネジャーの仕事場所
居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所は、ケアマネジャーが働く場として最もポピュラーな場所の一つです。自宅で介護を受ける人を対象にサービス利用の支援を行います。自宅での生活を前提としたケアプランを作成するにあたり、利用者宅を訪問し状況を確認。心身の状態・居住環境に合致するサービスが滞りなく受けられるよう、関係各所との調整も担当します。
高齢者ケア施設
介護福祉施設で働くケアマネジャーは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、特定の事業所に所属。入所者のケアプラン作成を担います。施設内の全ての入所者や入所希望者を支援するため、居宅介護支援事業所のケアマネジャーと比べると一人当たりの担当人数は多め。また施設によっては、連携し介護業務を兼務する場合もあります。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、地域住民の健康増進や福祉サービスの活用拡大を目指し、相談やケアプランの策定などを行う場。ケアマネジャーは、地域包括支援センターの大きな役割の一つ「介護予防ケアマネジメント」を主に担当します。介護予防ケアマネジメントは、要支援の認定を受けた人が要介護状態に移行しないように、また要介護状態になった場合に状態悪化を食い止めることを目的としています。
ケアマネジャーのやりがい
医療職や介護職を志す人たちと同様に、ケアマネジャーもまた、「誰かの役に立ちたい」という思いで資格を取得し、その経験と知識をもとに活躍している専門職です。ケアマネジャーの資格試験を受けられるのは、「医師・看護師・介護福祉士・社会福祉士・理学療法士などの国家資格を持ち、保健・医療・福祉の分野で5年以上の実務経験がある人」と定められています。これらの専門職として働く中で「もっと力になりたい」という思いを抱き、資格取得を目指す人も少なくありません。
ケアマネジャーの仕事は、自宅での生活の継続や介護福祉施設への入所という、人生に関わる支援。困っている利用者・家族を近くで支えることから、感謝の言葉を直接もらえる場面も多々。ケアマネジャーの介入は利用者の生活状況の改善に向けた第一歩。どうしたら状況が良くなるか、自身が提案・実践に向けて動いた結果が目に見える充実感は大きなものです。
ケアマネジャーのタイムスケジュール例【居宅ケアマネ】
9:00 始業
居宅介護支援事業所や地域包括支援センターなど職場に出勤し、1日のスケジュールを確認。スタッフ間でのミーティングやメールチェック、業務連絡などを行います。利用者宅への訪問やモニタリングが入っている日は、書類や荷物を準備。時間にも心にも余裕をもって利用者宅に訪問できるよう、身支度を整えておきます。
10:00 モニタリング
利用者宅に赴き、今利用しているサービスが利用者本人の状況・状態、家族のニーズに合っているかをチェック。今のままで良いのか、何か改善が必要なのか。両者から話を聞き、ケアプランと照らし合わせます。追加で相談や質問があった際にはヒアリング・提案を実施。より万全な援体制を築くためにも、欠かせないステップです。
12:00 昼休憩
訪問スケジュールなどによって前後しますが、休憩を取ってホッと一息。事業所に戻って同僚スタッフと昼食を摂ったり、時には外食でリフレッシュしたり。比較的自由に過ごせる時間です。午後に訪問など外出がある場合は休憩時間中に移動をすることもあり、自身のスケジュールと照らし合わせながら調整する必要があります。
13:00 担当者会議
介護サービス事業所の担当者や現場スタッフ、主治医、利用者・家族などが集まり、ケアマネジャーが作成したケアプランの内容や意図、それにより得られる結果と目標などを共有します。ケアマネジャーはこの会議の司会進行役として、参加者の話をヒアリング。介護サービスの利用開始に向け、全体の話をまとめていきます。
14:00 アセスメント
新規利用者宅へと訪問し、ケアプラン作成のためのヒアリング・調査を実施。利用者や家族が抱える課題や今の健康状態、生活環境といったあらゆる点を確認します。アセスメントは利用するサービスの決定に大きく関わる段階。困っていること・改善したいこと、そしてサービス利用により目指すものなどを細かく、深く聞き取ります。
15:00 役所にて代行業務
利用者・家族に代わり、役所での書類の提出や各種手続きを行います。また、役所のケースワーカーとの連携もケアマネジャーとしての重要な仕事。利用者の状況を共有し、必要な支援について話し合います。ケースワーカーは地域住民の困りごとの相談・支援・援助を幅広く行っているため、参考になる話を聞けることも多々あります。
16:00 ケアプラン作成などの事務作業
事業所に戻り、その日に訪問した利用者の状況やヒアリング内容を各介護サービス事業所へと共有。支援経過の記録や、新規の利用者のケアプラン作成、サービス計画表の作成などを行います。ほかにも、外出中に新たに受け入れた利用者のサービス調整や、翌日のスケジュール確認も実施。腰を落ち着けてデスクに向かう時間です。
18:00 退社
訪問スケジュールや事務作業のボリュームにもよりますが、業務が終わっていれば帰宅。当日の業務報告を済ませて退勤します。利用者・家族の事情で夕方以降に訪問をすることもあるものの、基本的に訪問は日中。利用者の容体変化など緊急の相談にも対応できるよう、退勤後の時間帯にはオンコールを導入している事業所もあります。
ケアマネジャーに向いている人とは?
1.コミュニケーション能力が高い
ケアマネジャーは利用者・家族だけでなく、各介護サービス事業所のサービス提供責任者や現場スタッフとのやり取りも多い職種です。社会保険サービスについての知識・認識の浅い利用者・家族に対し、利用できるサービスや社会資源についてしっかりと説明できる知識と合わせて「わからない」「不安」といった気持ちに寄り添う姿勢も大切。
また、ケアプランの作成・見直しを進める中で、医師・看護師・ヘルパーといった専門職と、スムーズな協力体制を構築することも必要不可欠です。
2.事務作業が得意
居宅訪問やヒアリング・アセスメントにくわえて、各書類の作成や提出もケアマネジャーの仕事の多くを占めるもの。書類作成・電話対応・メールチェック・関係事業者とのやり取りといった事務作業が得意であることが求められます。
また複数の利用者を同時に担当すること、複数の介護サービス事業所とやり取りすることもあり、マルチタスクをこなす能力が高い人にも向いている職種です。スケジュールを正確に把握し、迅速に対応できる能力が活きます。
ケアマネジャーになるには
ケアマネジャーになるには、「介護支援相談員実務研修受講試験」を受験し、合格する必要があります。
実務経験を積み、受験資格を満たす
介護支援相談員実務研修受講試験の受験資格は、「指定の国家資格にもとづく業務に通算5年以上(かつ900日以上)従事」、または「施設などで相談援助業務に通算5年以上(かつ900日以上)従事」の条件に当てはまる人。看護師の場合、通算5年以上の実務経験があれば受験が可能となります。
必要な書類を作成し、受験を申し込む
都道府県ごとに異なりますが、申し込み期限は毎年5~7月頃。試験は毎年1回、10月頃に実施されます。必要書類は「受験申込書」「実務経験証明書の内容確認等に必要な添付書類」「実務経験証明書、または実務経験見込み証明書」の3種類。
これらの書類を用意して、受験申込みの際に試験実施機関へと提出。申し込みに必要な願書は各都道府県の実施団体や市町村、社会福祉協議会などで配布しています。
試験に合格する
介護支援専門員実務研修受講試験に合格後、介護支援専門員実務研修を修了すると、介護支援専門員証が交付され、ケアマネジャー資格を取得できます。実施回によって差はあるものの、ここ数年の合格率はおおむね20%前後。 120分の筆記試験(60問)となっており、内容は5つの選択肢から複数回答する5肢複択方式で行われます。
ケアマネジャーの年収
厚生労働省公表「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、ケアマネジャーの平均年収は約453万円。令和3年から4年にかけては業務手当や資格手当の増額が影響し、平均年収が1.5万円程度アップしています。
特に直近10年では平均年収は増加傾向。平成30年からケアマネジャーになるためのハードルが高くなったことも、平均年収が引き上げられた理由といえるでしょう。経験年数を重ねるにつれて基本給が上がるのはケアマネジャーも他の職種と同様。同調査によると、年齢・経験年数別では、45~49歳/勤続年数15年以上の平均年収が一番高いことがわかります。
また、勤務先によっても給与は異なり、居宅介護支援事業所よりも特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった介護福祉施設のほうが高い傾向にあります。
ケアマネジャーの今後の需要
超高齢社会の最中にある日本では、介護サービス事業所や介護サービスの需要は拡大中。ケアマネジャーは、その利用の根幹である社会保険サービスに大きく関わる仕事です。AIによる仕事の効率化が進む昨今ではありますが、利用者と直接向き合い、話を聞き、ケアプランを作成するケアマネジャーは、AIに代替される可能性が低い仕事といえるでしょう。
さらに、居宅介護支援事業所・介護予防支援事業所・介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院)・有料老人ホーム・グループホームでは1名以上のケアマネジャー配置が義務化されており、ケアマネジャーの需要は今後も安定していると推測できます。
まとめ
業務上、看護師と協力・連携する場面も多いケアマネジャーですが、配置が必要な事業所数に対し、ケアマネジャーの数は余裕があるとはいえない状況にあります。令和6年度の「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の改正」の中では、居宅介護支援の運営基準の見直しがあり、ケアマネジャーの負担軽減も行われました。
オンラインモニタリングも解禁となり、条件付きではあるものの、利用者の居宅に訪問することなくモニタリングすることも可能に。ほかにも、一部の自治体では特別手当(居住支援特別手当)の支給や待遇改善といった施策も実施されており、全国的に波及していくことが考えられます。
これらにより、ケアマネジャーを目指す人も増えると期待されています。現状の人手不足の解消と、待遇面の改善が成される日も近いかもしれません。