治験コーディネーターは、薬の開発試験である「治験」がスムーズに進むように、医療機関や製薬会社、被験者の間に立ってサポートする役割を担います。
最近では看護師の資格を活かしながら治験コーディネーターとして働く人も増えています。
本記事では、治験コーディネーターの仕事内容や給料事情などについて、詳しく解説します。
治験コーディネーターとはどんな仕事?
まずは治験コーディネーターの仕事内容や働き方について、紹介します。
治験コーディネーターの仕事内容
製薬企業が開発した新薬は、世の中に流通する前に「治験」という臨床研究を経由します。治験コーディネーターは治験がスムーズに進むように、医療機関と製薬会社、そして被験者の間に懸け橋を渡す役割を担います。
仕事内容は治験を受ける被験者への治験内容の説明、スケジュールの調整、治験期間中の被験者のケアやサポートが中心です。また治験担当医師や関連部署への連絡・相談、治験データの記録など、医学的な判断を伴わない業務全般を広く担当します。
治験の立ち上げ期や被験者のスケジュールによっては、残業や土日出勤が必要となることもあり、柔軟な対応力やスケジュール調整・管理のスキルも求められるでしょう。
治験コーディネーターの1日のスケジュール例
治験コーディネーターの1日の流れは、担当する治験の種類や医療機関によって異なりますが、一般的に以下の通りです。
担当医療機関に出勤し、医師や医療スタッフに挨拶。メールチェック、スケジュールの確認を実施。
▼ 9:30~12:30|被験者対応
カルテ・検査結果の確認、治験薬や検査キットの準備。
被験者対応(治験薬の服薬指導、服用状況や体調の確認、医師診察の同席、記録補助、検査の調整)
▼ 12:30~13:30|昼休憩
▼ 13:30~15:00|事務作業・新規被験者対応
データ入力、問い合わせ対応、インフォームドコンセント(説明・同意取得)補助、次回のスケジュール調整。
▼ 16:00〜18:00|記録整理・業務報告
データ入力、検体の回収・提出、日報作成、メール対応。業務が終わり次第、退勤。
治験コーディネーターの働き方
治験コーディネーターの働く場所は、大きく治験施設支援機関(SMO)と医療機関に分かれます。各職場の働き方について、詳しく見ていきましょう。
治験施設支援機関(SMO)に所属する
治験施設支援機関(SMO)に所属する場合、その企業に属しながら、医療機関に派遣されるかたちで働くことになります。治験コーディネーターの多くはSMOに所属しているといわれています。
中途採用を行うSMOの多くは、看護師や薬剤師をはじめとする医療系の資格をもつことを応募条件にしています。ただし、医療系の資格を持っていても、採血や点滴をはじめとする医療行為は行えません。
医療機関に所属する
医療機関に所属する治験コーディネーターは、「院内治験コーディネーター」と呼ばれます。
院内治験コーディネーターは、もともと医療機関に看護師や薬剤師、臨床検査技師などの専門職として所属している人が部署異動によって同職に就くことが多く、外部向けに求人を出すことはほとんどありません。
もし治験コーディネーター職が在籍する医療機関で働いているのであれば、院内で募集があるかどうか、確認してみるのもひとつの手です。
治験コーディネーターとして働くメリット・デメリットとは?
治験コーディネーターは、新薬の開発を支えるやりがいのある職種ですが、働くうえでメリット・デメリットがあります。
メリット
治験コーディネーターとして働くメリットには、以下のような点が挙げられます。
● 夜勤がなく規則的な勤務である:基本的に日勤のみで、夜勤がないため、ワークライフバランスが図りやすい。
● 医療業界に関わり続けられる:看護師や薬剤師などの医療資格を活かし、新薬開発に貢献できる。
● 未経験からでも挑戦しやすい:医療知識があれば特別な資格は不要で、研修を受けながら働ける。
● キャリアアップが期待できる:経験を積めば、プロジェクトリーダーやCRA(臨床開発モニター)への道もある。
デメリット
一方で、治験コーディネーターとして働く際には、以下のような点に注意が必要です。
● 医療行為ができない:看護師経験を活かせるが、注射や処置などの医療行為は行えない。
● 事務作業が多い:データ入力や報告書作成など、細かい書類業務が多く求められる。
● 残業・土日出勤の可能性がある:治験の進行状況によっては、時間外勤務や休日対応が必要になる。
治験コーディネーターは、医療に関わりつつワークライフバランスを重視したい人に向いていますが、事務作業やスケジュール管理に苦手意識があると務まりにくいでしょう。
治験コーディネーターになるには?
ここからは治験コーディネーターになるために必要な資格や学歴などについて解説します。
1:資格
結論から言うと、治験コーディネーターになるために特別な資格やスキルは必要ありません。
ただし、実務においては高い専門性が求められるため、看護師・薬剤師・臨床検査技師などの医療資格があると有利です。最低でも臨床経験が2年以上あれば、即戦力として活躍できるでしょう。
より専門性を高めたいのであれば、日本臨床薬理学会認定CRC制度、日本SMO協会公認CRC制度などの認定資格を取ることもおすすめです。
2:学歴
治験コーディネーターになるために特定の学歴は必要ないものの、大学で医学・薬学・看護学・生物学・臨床検査学などの医療・理系学部を履修・卒業していると有利です。
医療系の専門知識を持つ人は、治験のプロセスや医療機関の仕組みの理解が早く、即戦力として活躍しやすくなります。
文系学部出身者でも、研修制度が充実した企業を選ぶことで、知識を補いながら働くことができるでしょう。
3:訓練期間
未経験から治験コーディネーターに転身し、独り立ちするには、3ヶ月~1年程度の訓練を受ける必要があります。
企業では、実地研修(OJT)を通じて、医薬品の臨床試験実施基準(GCP)や被験者対応、データ管理、書類作成を学びます。特にSMO(治験施設支援機関)では研修が充実しており、未経験者でもスムーズに業務に必要な知識・スキルを習得できるでしょう。
企業によっては長期的なフォロー研修があり、段階的にスキルアップできる環境が整っているところもあります。
4:実務経験
治験コーディネーターは未経験でも挑戦できますが、臨床経験が2年以上あると転職に有利です。
特に看護師、薬剤師、臨床検査技師などの資格を持つ人は、医療機関との調整や被験者対応に長けていると判断され、即戦力として採用されやすくなります。
また、経験を積むことで、プロジェクトマネージャーやCRA(臨床開発モニター)など、治験業界内でのキャリアアップも可能です。
治験コーディネーターの年収・給料の目安
治験コーディネーターの平均年収は440万円~460万円とされています。
未経験の場合、年収は一般的に300万円~400万円程度で、経験を積むことで500万円以上の収入が期待できます。またプロジェクトリーダーや管理職に昇進すると、600万円~700万円以上の収入を得ることも可能です。
なお給与は勤務先によっても異なります。SMO(治験施設支援機関)に所属する場合は、固定給に加え、資格手当や外勤手当・時間外手当などがつきます。また医療機関所属の院内治験コーディネーターは、病院の給与体系に準じて給与が支払われるケースが多い傾向にあります。
さらに、治験の立ち上げ期や繁忙期には残業手当や休日手当がつくため、勤務環境によっても収入は変動します。
看護師が治験コーディネーターに転職する際のポイント
看護師が治験コーディネーターへ転職する際は、業務内容の違いや求められるスキルについて理解しておくことが重要です。
1. 医療行為ができないことを理解する
治験コーディネーターは被験者のケアや治験の進行管理を行いますが、注射・採血・点滴などの医療行為は一切できません。業務内容の違いを十分に理解しておきましょう。
2. 事務作業が多いことを認識する
治験コーディネーターにはデータ入力や書類作成などの事務作業が多く求められるため、PC作業に慣れる必要があります。
3. 転職先の選び方に注意する
治験コーディネーターの勤務先には、SMO(治験施設支援機関)と医療機関の2種類があります。未経験者は、研修制度が整ったSMOからスタートするのがよいでしょう。
4. 求められるスキルを身につける
医師・製薬会社・被験者の調整役として、コミュニケーション能力や調整力が求められます。
転職前にこれらのポイントを理解・把握し、事前準備を行うことで、入職後のミスマッチを防ぎ、スムーズにキャリアをスタートできるでしょう。
治験コーディネーターに向いている看護師の特徴
治験コーディネーターに向いている看護師の特徴は以下のとおりです。
● コミュニケーション力がある ※被験者・医師・製薬会社との調整が多いため
● 事務作業が苦にならない ※データ入力・書類作成業務が大半のため
● スケジュール管理が得意 ※治験の進行・被験者の通院調整を担当するため
● 新しい知識を学ぶ意欲がある ※治験ルールや薬剤に関する知識の更新が必要なため
これらのスキルを持つ人は、治験コーディネーターとして活躍しやすいでしょう。
看護師が治験コーディネーターに転職した場合の平均年収
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、治験コーディネーターの平均年収は443.3万円です。未経験者の年収目安は300万〜400万円、経験者は400万〜500万円程です。
一方、看護師の平均年収は508.1万円です。看護師が治験コーディネーターに転職した場合には、大幅に年収が下がる可能性があります。
というのも、治験コーディネーターの勤務形態は基本的に日勤のみです。夜勤のある病棟看護師から同職へ転職すると、夜勤手当分の給料が減ります。また医療行為も行えないため、年収が下がってしまうのです。
治験の立ち上げ期をはじめとする繁忙期には、時間外勤務や休日勤務が必要になる場合もあります。SMOや医療機関によっては、これらの割増手当に加え、外勤手当や営業手当、CRC手当が支給されるところもあり、働く場所によって少しずつ給料が異なるようです。
昇給率は看護師よりも若干高いといわれ、経験を積むことで、将来的に600万〜700万円レベルの高年収を得ることも期待できます。
参照元 出典:「令和4年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)
まとめ
本記事では治験コーディネーターの仕事内容や給料について、紹介しました。治験コーディネーターは、新薬の開発に関わるやりがいがあることに加え、日勤中心でワークライフバランスを重視できる点も魅力です。
一方で、医療行為ができない・事務作業が多いといった業務内容の違いも大きいため、転職を検討する際は、自分に向いているかどうか、しっかり考えることが大切です。
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