HCUとは? ICU・CCU・SCUとの違いや看護師の役割・仕事内容などを徹底解説

HCUとは? ICU・CCU・SCUとの違いや看護師の役割・仕事内容などを徹底解説

急性期医療に興味がある看護師のなかには、HCUで働きたいと考えている人もいるのではないでしょうか。HCUとICUにはどのような違いがあるのか気になりますよね。

この記事では、HCUの特徴やICU・CCU・SCUとの違い、HCU看護師の役割や仕事内容について解説します。HCUで働きたいと考えている人は参考にしてみてください。

HCUとは?

HCUは「High Care Unit(ハイケアユニット)」の略称で、高度集中治療室のことをいいます。HCUでは主に、ICUから転棟した患者さん、侵襲度の高い手術を受けた患者さん、緊急入院の患者さんのうち全身管理の必要な人が滞在します。HCUでは一般病棟のように診療科や疾患ごとに患者さんをみるのではなく、全身管理の必要なすべての患者さんの治療を行います。

HCUに配置される医療職には、医師・看護師・理学療法士・栄養士・理学療法士などがおり、チームで重症患者さんの治療やケアを行います。医療機関によっては、HCU病棟単独ではなく、ICU病棟内にHCU専用のベッドを設けているところもあります。

特徴1:対象となる主な疾患

HCUでは、ハイリスクの状態にあって、一般病棟では管理がむずかしい患者さんを受け入れます。HCUの入室対象となるのは、以下の疾患または状態の患者です。

● 侵襲が高い手術の術後管理
● 脳出血、くも膜下出血、脳梗塞
● 急性心筋梗塞、重症心不全、大動脈解離
● ショック、敗血症、意識障害
● 急性呼吸不全、喘息重積発作
● 低血糖、高血糖、重症膵炎
など

HCUは重症患者さんが滞在する病棟です。一方で、医療機関のなかには、病態や治療内容によって回復期や終末期の患者さんも入室対象とするところもあります。

特徴2:施設基準

HCUには診療報酬に基づいた施設基準があります。具体的な内容は次のとおりです。

医師数専任の常勤医師が常時1名以上
看護師の配置基準(※)4対1 または 5対1
※他部署での夜勤を行っていない看護師
施設の設備ハイケアユニット入院医療管理を行うのに適した治療室があり、次の医療機器を常時備えている
‐救急蘇生装置(気管内挿管セット、人工呼吸器など)
‐除細動器
‐心電計
‐呼吸循環監視装置
入院基準ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者が8割以上いる

看護師の配置基準とは、看護師1人あたりが受け持つ入院患者数のことです。一般病棟の配置基準は7対1または10対1ですが、HCUでは4対1と、より多くの看護師が配置されています。

特徴3:治療で使用する医療機器

HCUでは、生命維持や全身状態の管理のために高度な医療機器を使用します。HCUで用いられる主な医療機器は以下です。

● 人工呼吸器、搬送用人工呼吸器
● 非侵襲的陽圧換気療法、体外式膜型人工肺(エクモ)
● ハイフローセラピー
● 低体温療法に関連した医療機器
● 除細動器
● 血液透析器
● 特殊血液浄化装置
● 簡潔式空気圧迫マッサージ装置
● 超音波機器
● 心電計、生態情報監視モニター
● 輸液ポンプ、シリンジポンプ

上記の医療機器のなかには、一般病棟でも用いられているものもあります。HCUでは、患者さん1人あたりの医療機器の使用台数や頻度が多く(高く)なります。

HCUとICU・CCU・SCUの違い

HCUとICU・CCU・SCUの違い

HCUとよく似ているものに、ICU・CCU・SCUがあります。「ICU(Intensive Care Unit:集中治療室)」は、先進医療技術を用いて、生命の危機にある重症患者さんを集中的に治療する病棟のことです。

「CCU(Coronary Care Unit:冠疾患専門治療室)」と「SCU(Stroke Care Unit:脳卒中集中治療室)」は特定の部位の疾患を扱う専門的なICUです。CCUでは循環器疾患、SCUでは脳疾患の専門治療を行います。

HCUとICU・CCU・SCUの違いは以下です。

HCU
(ハイケアユニット)
ICU
(集中治療室)
CCU
(冠疾患専門治療室)
SCU
(脳卒中集中治療室)
救急度高い非常に高い
入室基準ハイリスク患者生命危機に瀕し
集中治療が必要な患者
集中治療が必要な
心疾患患者
集中治療が必要な
脳疾患患者
ベッド数30床以下基準はないが、集中治療を行うのにふさわしい環境整備が求められる
看護配置基準4対1または5対12対13対1

HCUとICUの違いについて詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。

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1:救急度

HCUは、ICU(CCU・SCUを含む)と一般病棟の中間にあたる存在で、「準集中治療室」とも呼ばれます。救急度を比較すると、ICU・CCU・SCUのほうがより救急度が高く、HICUはICUに準じた救急度となります。

これにともない、常勤医師の配置基準は、HCUでは「医療機関内に1名以上いること」であるのに対し、ICUは「治療室内に2名以上いること(※特定集中治療室管理料の区分におけるICU1及びICU2)」です。SCUの常勤医師の配置基準はHCU同様、「医療機関内に1名以上いること」です。

2:入室基準

HCUには、侵襲度の高い手術後の患者さん、緊急入院患者さんのうち、ハイリスクの状態にある人が入室します。同じ疾患でも患者さんが生命危機に瀕しており、集中治療が必要な場合はICU(CCU・SCUを含む)へ入室します。

また診療報酬上、HCUの入室期間は最長21日です。そのため、低出生体重児のように、ハイリスクで、かつ長期療養が必要な患者さんは特殊病棟へ入室します。

3:ベッド数

HCUの施設基準ではベッド数は30床以下と定められています。ICUでは特にベッド数の定めはありませんが、集中治療を行える施設基準が求められます。実際のHCUやICUのベッド数は医療機関によっても異なります。医療機関ごとのHCUとICUのベッド数の例は以下です。

● A病院:HCU8床、ICU2床
● B病院:HCU16床、ICU20床

4:看護基準・看護体制

HCUとICU(CCU・SCUを含む)の看護配置は次のとおりです。

HCUICUCCUSCU
4対1または5対12対13対1

HCUの看護体制は一般病棟よりも手厚いという特徴があります。なお、より緊急度の高いICU・CCU・SCUの方が、患者一人あたりの看護師配置数は多くなります。

HCUで働く看護師の役割と仕事内容とは?

HCUで働く看護師の役割と仕事内容とは?

HCU看護師は、さまざまな疾患をもつハイリスク患者さんに対して、全身管理や看護ケアを行います。急性期を脱したとはいえ、ハイリスク患者さんの全身状態は変化しやすく、高度な医療ケアが必要になります。

とくに高度な医療を提供する現場では、生命維持が最優先されます。医療機器やチューブにつながれた患者さんに対して、大きな不安を抱く家族も少なくありません。HCU看護師は限られた面会時間のなかでも、家族が患者さんの病状を受け止め、不安を軽減できるよう、傾聴を大事に寄り添うケアを行います。

HCUで働く看護師の1日のスケジュール

HCUでは24時間体制で重症患者のケアを行うため、看護師は日勤・夜勤に分かれて勤務します。日勤帯と夜勤帯の1日のスケジュール例は以下です。

≪日勤帯≫

8:00出勤
情報収集(当日の受け持ち患者の状態、手術や検査、転棟予定をチェック)
8:30夜勤者からの申し送り受け
9:00バイタルサイン測定と全身状態の観察
(必要時に医師へ報告し+指示を受ける)
10:00処置の介助、清潔ケア(清拭や更衣など)
検査出し
患者家族へのHCUの説明
転棟準備(申し送りや電子カルテの処理)
12:00昼食(血糖測定やインスリン投与、配膳や経管栄養の実施)
与薬
口腔ケア
※メンバー間で交代して昼休憩
14:00バイタルサイン測定と全身状態の観察
15:00足浴清潔ケア(洗髪や足浴)
16:30夜勤者への申し送り
看護記録
17:00退勤

 

≪夜勤帯≫

16:30情報収集
日勤者から申し送り受け
17:00バイタルサイン測定と全身状態の観察
ドレーン管理、吸引などの処置
食事介助、経管栄養の実施
18:00夕食(血糖測定やインスリン投与、配膳や経管栄養の実施)
与薬
口腔ケア
20:00眠前薬の投与
排泄ケア、体位変換
22:00バイタルサイン測定と全身状態の観察
ドレーン管理、吸引などの処置
排泄ケア、体位変換
夜間の緊急入院の受け入れ
2:00メンバー間で交代して休憩及び仮眠
4:00患者さんのバイタルサイン測定、全身状態の観察
排泄ケア、体位変換
6:00患者さんのバイタルサイン測定
排泄ケア、体位変換
採血
モーニングケア
7:00朝食(血糖測定やインスリン投与、配膳や経管栄養の実施)
与薬
口腔ケア
8:30日勤者への申し送り
看護記録
退勤

HCU病棟の一日の流れは、一般病棟と大きく変わりません。一方で、術後の経過を注意してみる必要がある患者さんのお迎えや一般病棟への転棟手続き、緊急入院の受け入れなど、患者さんの出入りにともなう業務が日常的にあります。

またHCUに滞在している患者さんの多くは、さまざまな医療機器を装着しています。ほかの看護業務を行いながら、常にアラームやモニターに注意を払わなければなりません。

HCUで働く看護師のやりがい・魅力とは?

HCU看護師のやりがいは、重症患者さんの急性期から回復するまでのプロセスを見届けられることです。HCUではICUから一般病棟へ移るまでの過程で滞在する患者さんも多く、一人ひとりの患者さんと長く関わることはありません。一方で重症患者さんの全身管理を行いながら、転棟を見据えたリハビリや家族への心理的なケアを行うといった濃密な看護を提供できる点が魅力です。

HCUにいる患者さんの疾患は幅広く、さまざまな疾患に関する専門的な医学知識や高度な医療機器の扱い方も学ぶことができます。業務のなかで培ったアセスメント能力や判断力は、今後看護師として働き続けるうえで大いに役立つでしょう。

HCUで働く看護師の大変なところ・必要な心構えとは?

HCU入室の患者さんは、術後患者や全疾患のハイリスク患者、救急外来からの緊急入院を受け入れます。HCUで看護師として働くには、幅広い診療科の疾患や検査、治療に関する知識やスキルを習得しなければなりません。

例えばバイタルサイン測定においても、体温・血圧・脈拍以外にも、瞳孔径や尿量など観察項目が一般病棟よりも多くなります。バイタルサインやモニターの変化から、いち早く異常に気付き、必要に応じて医師に報告する判断力が必要です。

またハイリスク患者さんをみるHCUでは、一般病棟に比べ患者さんの死亡率が高いという事実があります。レベルの高い看護の知識とスキルが必要とされるだけでなく、患者さんの死を乗り越えられる強い精神力も求められます。

HCUで働く看護師の給料目安は?

HCU看護師の給料は、一般病棟で働く看護師と大きな差はありません。意外なことに、HCUは看護師の残業が少なく、定時で退勤しやすい部署です。

残業代が支給されない分、看護師の平均年収である509万円よりも下回る可能性もあるでしょう。

HCU勤務に向いている看護師の特徴とは?

HCU勤務に向いているのは、勉強熱心な看護師です。HCUは全診療科から重症度の高い患者さんが入室するため、多くの疾患の知識や看護ケアに関して学ばなければなりません。

またHCUでは、患者さんの治療課程において、医師・薬剤師・理学療法士などさまざまな医療職が連携しながら治療方針を決定します。多職種との情報交換、看護の立場からの提案を円滑に行うために、コミュニケーション力も欠かせないでしょう。

さらにHCUのように高度な医療を扱う現場では、家族へのきめ細やかなフォローも忘れてはいけません。緊張感のある業務のなかでも、不安を抱える家族への配慮も丁寧に行うよう心がけましょう。

HCU看護師になるために必要なスキル・知識

HCUでは全診療科のハイリスク患者の看護ケアを行います。そのため、さまざまな疾患や病態の看護知識やスキルが求められます。またHCUでは、一般病棟ではあまりなじみのない高度な医療機器を日常的に扱います。患者さんの全身管理のために、複雑な医療機器の扱い方を学んでいかなければなりません。

HCU看護師になるためにおすすめの勉強法

看護師がHCUで働くにあたり、特別な資格を取得する必要はありません。毎年、一定数の新卒看護師がHCU看護師に配属されます。HCUでは重症患者さんの全身状態をみる必要があるため、医療機関のなかには、看護師養成校の成績優秀者を配属させるところもあるようです。新卒でHCU配属を目指すのであれば、看護師養成校で良い成績を収めるよう心がけましょう。

HCUでの経験を活かせるキャリアプラン・目指せる資格とは?

HCUでの経験を活かせるキャリアプラン・目指せる資格とは?

HCU看護師としてさらにスキルアップを図りたい人は、専門分野に関連した資格取得を目指しましょう。

急性期看護や全身状態の管理に関する研修・セミナーへの参加は、日々の看護業務に役立ちます。とくにHCUのように重症度の高い患者さんをみる部署では、患者さんの健康状態も変化しやすい特徴があります。急変時にも慌てずに対応できるように、BLSやACLSといった救命処置のプログラムを受講するのもよいでしょう。

HCUで働くにあたり、スキルアップを図りたいのであれば、クリティカルケア分野の認定看護師や急性・重症患者看護の専門看護師の資格取得を目指すのもよいでしょう。急性期看護に関連した認定看護師や専門看護師の資格を取れば、管理職への道も開けます。

まとめ

HCU(ハイケアユニット)はICUと一般病棟の中間に位置する部署です。HCUは「準集中治療室」とも呼ばれるように、その救急度はICU・CCU・SCUに準じます。

看護師がHCU配属になるのに、特別な資格を持つ必要はありません。しかし、HCU看護師はさまざまな診療科の重症度の高い患者さんを担当するため、疾患や治療、医療機器機の扱いなど専門的な知識やスキルを習得する必要があります。また重症患者さんの全身管理に関わるだけでなく、多職種との連携や患者家族へのきめ細やかな配慮も求められます。

HCUで身に付けた患者さんの全身管理や状態観察に必要な知識とスキルは、他の部署に配属された際も大いに役立ちます。クリティカルケアや急性期看護に興味がある看護師は、HCU配属を目指すのもよいでしょう。

参考:令和5年賃金構造基本統計調査
   広島大学病院 看護部管理室「HCU(High Care Unit)」
   厚生労働省「高度急性期入院医療について」

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