助産師と看護師はどちらも医療現場で重要な役割を果たしていますが、資格や仕事内容、ケアする対象など、多くの点で違いがあります。
この記事では、助産師と看護師の具体的な違いを解説します。また、給料や将来性についても詳しく説明していきます。これから助産師や看護師を目指す人は、参考にしてください。
助産師とは?
助産師は、妊娠や出産に関連する専門的な知識と技術を持つ職種です。主に、出産の立ち会いや介助、妊婦や新生児のケアなどを行い、周産期の女性の健康をサポートします。
日本の法律では、助産師は女性のみが就ける職業で、正常分娩においては、医師の指示を得ずに自分の判断で分娩の介助をすることができます。
「保健師助産師看護師法(保助看法)」の第3条では、以下のように定義されています。
「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。
出典:保健師助産師看護師法第三条
なお、看護師についての詳細は、以下の記事をご覧ください。
助産師と看護師の違い
助産師と看護師の主な違いは、資格の取得要件、ケアする対象、仕事内容、職場、給料にあります。
それぞれ見ていきましょう。
1:資格
助産師と看護師は、いずれも看護師資格を有する職種です。しかし、助産師は看護師の資格に加え、助産師の資格を保有する必要があります。
助産師が2つの国家資格を持つという点は、看護師との大きな違いのひとつです。
助産師になるためには、まず看護師資格を得た後、専門学校や指定された短大・大学で一定の教育を受け、助産師養成課程を修了しなければなりません。なお一部の大学では、看護師課程と助産師課程を同時に履修し、両方の国家試験を受けることも可能です。
2:ケア対象
助産師と看護師の最も明確な違いは、ケア対象にあります。
助産師は妊娠や出産に関する専門知識と技術を活かし、妊婦や産婦・新生児に対して、より専門的なケアやサポートを提供します。もちろん看護師資格を有しているため、傷病者のケアも行えます。
一方、看護師は年齢や性別に関わらず、病気や怪我を持つすべての人々に対し、受診のサポートや療養上の世話を行います。
3:仕事内容・活躍シーン
助産師と看護師では、仕事内容や活躍シーンに明確な違いがあります。
助産師の主な仕事は、新生児の取り上げや妊婦・産婦、新生児の健康管理、保健指導です。助産師は、出産後も母子が健やかに育てられるよう支援する役割も担います。また、不妊や思春期・更年期に関する相談など、女性のライフサイクル全般にわたる健康相談にも応じます。
一方、看護師の業務は、入院患者や在宅療養中の患者の療養支援が中心です。具体的には医師の診察や治療、検査が安全かつスムーズに行われるようサポートすると同時に、患者やその家族の不安を軽減すべく、心のケアも行います。
4:職場
助産師と看護師では、職場にも違いがあります。
助産師の主な職場は、以下の通りです。
● 病院
● 診療所
● 助産所
● 産後ケアセンター
● 不妊治療専門クリニック
● 保健所
これらの場所で、助産師は妊産婦や新生児の健康管理、分娩の補助を行います。また、地域の母子保健活動にも従事します。
一方、看護師は病院・クリニック、訪問看護ステーション、高齢者ケア施設など幅広い場所で働き、さまざまな患者に対して医療ケアを提供します。看護師は、患者の治療や健康管理・療養上の世話に加え、リハビリテーションや予防医療にも関わります。
このように、助産師は妊産婦と新生児に特化したケアを行うのに対し、看護師はより多様な患者に対応します。
5:給料・年収
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、助産師と看護師の平均給料は以下の通りです。
平均給料 | 年収 | |
助産師 | 395,800円 | 5,669,500円 |
看護師 | 350,600円 | 5,061,400円 |
上記はあくまで目安ですが、助産師は看護師よりも約60万8,100円、収入が高いことがわかります。
助産師は2つの国家資格を持つ専門職であること、また、助産師手当や分娩介助手当を支給する施設が多いことが、年収の差に寄与しているといえます。一般的に、年収は勤続年数や年齢を重ねるにつれ、増加する傾向にあります。
助産師の年収は、一般的に30代後半から全職種の平均年収を超えます。また、年齢とともに役職に就くチャンスも増えるため、年収も増加します。なお、年収増のピークは50代です。
6:キャリアアップ・将来性
助産師と看護師のキャリアアップには明確な違いがありますが、専門性を磨くことで、それぞれキャリアの選択肢が広がります。
助産師は、助産管理や妊娠合併症に関する認定資格を取得することで、より高度な分娩ケアを提供できます。また、助産院の開業や地域母子保健活動のリーダーとしての役割を担うことにより、地域社会への貢献もできるでしょう。
一方、看護師は、認定看護師や専門看護師の資格を取得することで特定の医療分野における専門性を高められます。看護師長や看護部長などの管理職に就き、医療現場でリーダーシップを発揮するという選択肢もあります。
助産師と産婦人科看護師の違い
助産師と産婦人科で働く看護師の違いは、主にケアの専門性にあります。
両者は患者をサポートする点では共通していますが、助産師は妊娠・出産に特化したケアを担います。具体的には、分娩の補助や新生児の健康管理・処置などです。
一方、産婦人科で働く看護師も、病棟で妊産婦や産後の母親に対するケアを行います。ただし助産師の資格を持たない看護師は、妊婦や新生児の保健指導に携わることはできません。また、出産時は医師・助産師のサポートを行いますが、分娩に直接関与することはありません。この点が、助産師との大きな違いです。その他、婦人科疾患をもつ患者の診察の補助や健診の介助も担当します。
助産師として求められる人材の特徴
助産師として求められる人材の特徴は、以下のようなものが挙げられます。
● 冷静な判断力
● コミュニケーション能力
● 共感力
● 指導力
● 忍耐力
● 体力
妊娠・出産という生命の誕生に関わる助産師には、予期しない状況でも冷静で的確に判断する力が求められます。また、命懸けの出産に立ち会うにあたり、精神的なタフさや忍耐力も不可欠です。
妊婦の不安を解消するために、助産師には医療知識だけでなく、心理的なサポートやコミュニケーション力も必要です。さらに、妊産婦やその家族に寄り添い安心感を提供するためには、共感力や指導力も重要になるでしょう。
助産師よりも看護師に向いている人の特徴は?
助産師は妊娠・出産に特化したケアを行う職業で、母親への心理的サポートや繊細なコミュニケーション力が求められます。
一方、年齢や性別を問わず、急性期から慢性期までさまざまな患者を対象にする看護師には、柔軟な対応力と幅広い知識が必要とされます。そのため、看護師は多様な病気や怪我の治療・看護ケアに興味がある人に向いている職業といえるでしょう。
助産師になるためには?
助産師になるためには、まず看護師資格を取得し、その後に助産師養成課程を修了して国家試験に合格する必要があります。
看護師資格を得るためには、看護学校や看護大学に進学し、看護師国家試験に合格することが求められます。助産師資格を取得するには、文部科学大臣または厚生労働大臣指定の養成学校を卒業しなければなりません。看護師と助産師の両方の資格試験合格を目指す場合と、すでに看護師資格を持った状態で助産師国家試験を受ける場合とでは、学校の選び方が異なります。
助産師国家試験の受験資格は、看護師国家試験に合格した後、助産師課程のある4年制の看護大学を卒業するか、看護師養成所および助産師養成所を卒業することで得られます。
なお、助産師になるためには女性であることが条件で、日本では男性はこの職に就くことはできません。
まとめ
助産師と看護師は、医療現場でそれぞれ異なる役割を果たしています。
助産師は妊娠や出産に特化したケアを提供し、周産期の女性や新生児の健康をサポートします。一方、看護師は、多様な疾患をもつ幅広い年代の患者に対して、急性期や慢性期の医療を提供します。両者は異なる役割を持ち、それぞれの専門性を活かして医療に貢献しているのです。
将来、助産師や看護師を目指す場合には、自身の興味や適性を考慮して自分に合った道を選ぶことが重要です。
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