看護におけるアドヒアランスとは?向上させるポイントやコンプライアンスとの違いを解説

看護におけるアドヒアランスとは?向上させるポイントやコンプライアンスとの違いを解説

看護におけるアドヒアランスとは?向上させるポイントやコンプライアンスとの違いを解説

アドヒアランスは、患者が自ら進んで治療に取り組む姿勢を表す重要な概念です。看護の現場では、治療効果を高めるためにアドヒアランスの向上が求められています。

この記事では、アドヒアランスの意味や重要性、向上させるポイントについて詳しく解説します。また、関連する医療用語についても紹介します。

アドヒアランスについて理解を深めたい看護師は、最後まで読んでみてください。

看護現場におけるアドヒアランスとは?

医療現場におけるアドヒアランス(adherence)とは、「患者自身が治療方法を理解・納得し、積極的に治療に参加すること」を指します。

わかりやすく言うと、患者が医療従事者の指示やアドバイスに従い、自主的に服薬や生活習慣の改善に取り組む姿勢のことです。具体的には以下のようなケースです。

 処方された薬を指示通りにきちんと服用すること
 食事制限や運動療法などの生活指導を受け入れ、実践すること
 定期的に通院すること
 禁煙や節酒などの生活習慣の改善に取り組むこと

疾患の治療や健康維持において重要なのは、患者の積極的な参加です。アドヒアランスを高めることで、治療効果の向上や生活の質の改善が期待できるでしょう。看護師は、アドヒアランスを高めるために、患者に丁寧な説明や支援を行う役割を担っています。

一方、患者が治療方針について納得できていなかったり、治療に消極的になったりしている状況を“アドヒアランス不良”と呼びます。看護師は、アドヒアランス不良を招かないためにも、患者が納得して治療に前向きに臨めるようサポートしていきます。そのためには医師や他の医療スタッフとの連携が重要になります。

看護現場でアドヒアランス不良が与える影響

アドヒアランス不良は、患者の治療効果に大きな影響を与えます。ここでは、アドヒアランス不良が与える主な影響について、以下の3つの観点から解説します。

 正確な治療効果の測定・評価が困難
 想定外の副作用
 医療費の圧迫

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.正確な治療効果の測定や評価が困難

アドヒアランス不良が起こると、正確な治療効果の測定や評価が困難になる可能性があります。

たとえば患者が処方された薬を正しく服用していなければ、本来の効果は得られません。薬の効果が得られないままでは、医師は治療の結果を正確に評価できなくなってしまいます。

具体的には、次のような場面が挙げられます。

 血圧の薬を飲んでおらず診察時に血圧が高くなっている
 糖尿病薬を指示通りに服用せず、血糖コントロール不良に陥っている
 抗生剤を自己判断で中止し、炎症の数値が悪化している など

こういった場面では、医師が「現在の処方では効果が不十分だ」と判断してしまい、患者は不必要な薬を追加処方されることにもなり得ます。主治医が正確な治療効果を把握できなければ、適切な治療方針が立てにくくなるでしょう。

2.想定外の副作用

アドヒアランス不良により、想定外の副作用が発生するリスクもあります。患者が医師から指示された服薬量を自らの判断で変更したり、医師の指示なく複数の薬を同時に服用したりすれば、予期せぬ反応が起こります。

たとえばステロイド薬は、効果も副作用も強い薬です。治療に使用した場合、医師の指示のもと適切に減量していかなければなりません。自己判断で急に服用を中止すると、離脱症状が出現するリスクが高まります。

3.医療コストの圧迫

患者が適切に自身の服薬管理や健康管理ができなければ、症状の悪化や合併症の発症リスクが高まります。その結果、本来であれば不必要な治療を受けなければならなくなったり、治療期間が長くなったりすることもあるでしょう。

治療の内容や期間が増えることは、患者個人の心身の負担だけでなく、国全体の医療費の増大にもつながります。医療コストを下げるためにも、アドヒアランスの向上は重要なのです。

看護現場においてアドヒアランスを向上させるポイント

看護師は患者のアドヒアランスを向上させるために、重要な役割を担います。看護現場におけるアドヒアランス向上のポイントは、以下の4つです。

 丁寧な服薬指導の徹底
 ポリファーマシーを解消するための提案や事前確認
 患者の負担を減らす服薬方法の提案
 患者との信頼関係の構築

それぞれ解説します。

丁寧な服薬指導の徹底

丁寧な服薬指導を徹底することは、アドヒアランス向上の基本です。看護師は、患者が薬の効果や正しい服用方法を理解できるよう、わかりやすく説明する必要があります。

平成30年に発表された厚生労働省の資料には、「6剤以上の薬を服用している高齢者は、薬剤による有害事象の発生率が増加していた」というデータがあります。このことからも、高齢者や複数の薬を服用している患者には、より丁寧な指導が求められるといえます。

服薬指導の際には、患者の理解度や、疑問点の有無を確認しながら、個々の状況に合わせて進めましょう。服用中の薬の効果とともに、薬を飲まないとどのようなデメリットがあるのかを伝えることで、患者自身が服薬を含めた治療全般に積極的に参加できるようになるかもしれません。

参照元:平成30年度診療報酬改定の概要 調剤|厚生労働省

ポリファーマシーを解消するための提案や事前確認

服用する薬の種類が多いと、有害事象や飲み忘れ、飲み間違いが起こるリスクが高まります。これらの問題を“ポリファーマシー”と呼びます。ポリファーマシーは“ポリ(Poly:多い)”と“ファーマシー(Pharmacy:調剤)”を組み合わせた造語です。

ポリファーマシーの解消は、アドヒアランス向上に大きく関わります。看護師には、患者が飲んでいる薬の種類や数を把握し、リスクの有無を判断することが求められます。必要に応じて看護師から医師へ、処方する薬の数を減らしたり、種類を変更したりといった相談を行うこともあるでしょう。

また、複数の医療機関を訪れている患者の場合、服用している薬が重複するリスクにも注意が必要です。

患者の負担を減らす服薬方法の提案

服薬を負担に感じる患者に対し、看護師が適切な服薬方法を提案することでも、アドヒアランスの向上につながります。

看護師が働きかけられるアプローチとして、次のようなものが挙げられます。

 服用する薬を一包化する
 錠剤を粉砕する
 お薬カレンダーの利用を勧める
 服薬ゼリーやオブラートの使い方を指導する
 家族や介護者とともに服薬サポート体制を整える

患者の生活背景を踏まえながら、実行可能な提案をすることを心がけましょう。

患者との信頼関係の構築

医療従事者と患者の信頼関係も、アドヒアランスに影響する要素として挙げられます。患者が治療の大切さや服薬の内容を正確に理解していたとしても、医師や看護師に対する信用がなければ、治療方針に不信感を持つこともあるでしょう。治療への意欲が下がってしまう可能性もあります。

信頼関係を構築するためには、以下のような姿勢が大切です。

 患者の話をじっくりと傾聴し、質問に丁寧に応対する
 わかりやすい言葉で繰り返し説明する
 患者の考えや訴えを受け入れ、前向きな言葉をかける

信頼関係を積み重ねていくことで、アドヒアランスの向上につながります。

アドヒアランスと関連する看護・医療用語とその意味

アドヒアランスの他にも、患者に寄り添った看護を行ううえで理解しておきたい医療用語があります。ここでは、アドヒアランスに関わる3つの用語について解説していきます。

 コンプライアンス
 インフォームド・コンセント
 アドボカシー

ひとつずつ紹介します。

コンプライアンス

コンプライアンスには、「規範や倫理を遵守すること」という意味があります。医療・看護現場におけるコンプライアンスとは、主に「患者が医師・看護師の指示に従い治療に参加すること」を指します。

コンプライアンスはアドヒアランスと類似する用語ですが、重視するポイントが大きく異なります。コンプライアンスが患者が医療従事者の指示に従うことを重視するのに対し、アドヒアランスは患者の自主性や理解度に重点を置きます。

かつての医療現場では、コンプライアンスが最も重要とされていました。しかし、現在の医療では、患者の主体性を重視するアドヒアランスの考え方が主流となっています。

インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントとは、「患者や家族が病状や治療について十分に理解すること、またそのために医療職は患者・家族が分かりやすく説明をすること、そして双方が同意をすること」この3つのプロセス全体を指します。ただ単に医師が患者に病状や治療方針を告げ、同意を得ることではありません。

インフォームド・コンセントが不十分では、患者や家族は医療従事者や病院に対し不信感を抱いたり、治療に対して消極的になったりすることもあるでしょう。アドヒアランスを向上させるためにも、患者・家族の理解をしっかりと得ることは非常に重要なのです。

看護師は、医師と患者の橋渡し役として、患者・家族に情報提供や意思決定の支援を行います。たとえば医師から患者への病状説明の場面では、看護師は患者が医師の話を理解できているのか、疑問点がないかなどを確認し、患者が説明をしっかりと理解・納得し、治療を受けるかどうかを決定できるようサポートします。

参照元:インフォームドコンセントと倫理 | 看護職の皆さまへ | 公益社団法人日本看護協会

アドボカシー

“アドボカシー(advocacy)”とは、“擁護”・“支持”を意味する言葉です。看護におけるアドボカシーとは、「患者の権利や利益を守り、患者自身ではうまく伝えられない主張を代弁すること」です。

次のような具体例が挙げられます。

 患者の想いや希望を医療チームに共有する
 患者の権利を主張する
 患者が自己決定できるよう、情報提供や支援を行う

アドボカシーが適切にできなければ、患者は医療従事者や治療方針に不信感を募らせ、結果としてアドヒアランス不良に陥ることもあります。看護師はアドボカシーについて理解し、患者の意思を汲み取れるように積極的に関わる必要があります。

まとめ

この記事では、アドヒアランスの意味や重要性、向上させるポイント、関連する医療用語について紹介しました。

アドヒアランスは、医療現場において、患者の治療効果を高める重要な概念です。患者が自ら進んで治療に参加することで、よりよい治療効果や生活の質の改善が期待できるのです。

反対に、アドヒアランス不良に陥ると、患者の健康や生活に支障が出てしまいます。アドヒアランス不良を避けるためにも、看護師には、患者が意欲的に治療を受けられるようサポートすることが求められます。

アドヒアランス向上への取り組みは、患者の治療効果を高めるだけでなく、看護師自身の成長にもつながるものです。

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