病院紹介や患者情報提供書、お礼状など医師への文書のやり取りで見かける「御机下」。病院やクリニックに届いた手紙の中で、御机下という言葉を見かけたことがある人もいるのではないでしょうか。
御机下は一般的に使われない言葉のため、読み方や意味について気になる人もいるでしょう。そこで、医師宛ての手紙でよく見かける「御机下」について解説します。
医療業界にいると、御机下という言葉に触れる機会がでてきます。参考にしてみてください。
御机下とは
看護師の中には、御机下という言葉を初めて見た人もいるかもしれません。ここでは、御机下や読み方や意味、御机下と近い意味合いで使われる言葉についてみていきます。
御机下の意味
御机下(おんきか、ごきか)は、文字通り机の下を指す意味のある脇付けです。脇付けとは、相手への敬意を表すために宛名に添える言葉で、封筒の宛名の脇や手紙の結びの挨拶の宛名に記します。
脇付けのひとつである御机下には、「直接渡すのは恐れ多いので、机の下に置かせていただきます」という意味合いが含まれています。
御侍史とは
御机下と似た言葉に「御侍史(おんじし・ごじし)」があります。御侍史も脇付けのひとつで、秘書やお付きの人を意味します。脇付けとして御侍史を使う場合には、「先生に直接手紙を出すのは恐れ多いので、お付きの人に渡します」という意味を表します。
御侍史は御机下と同様に尊敬を表す言葉として、封筒の宛名や手紙の結びの挨拶に添えます。
医療業界で多く使われる言葉
脇付けである御机下・御侍史は主に医療業界で用いられています。本来、「机下」「侍史」には尊敬の意が込められているため、尊敬や丁寧な気持ちを表す「御」を付けるのは誤用です。
しかし、古くから医師のことを「お医者様」と呼ぶように、医療業界では、慣習的に御机下も御侍史が広く使われています。
医師の中には、正しい用法である「机下」や「侍史」を使う人もいますが、「御机下」「御侍史」が誤用であることは、広く認知されていません。そのため、医師宛ての文書に「机下」「侍史」を用いると、相手の医師から失敬と受け取られる可能性があります。
「机下」や「侍史」を使うかどうかは、状況をみて判断しましょう。
御机下の使い方
御机下・御侍史は主に医師から医師への患者情報提供書や、患者さんから医師へのお礼状で使われます。ここでは御机下・御侍史の具体的な使い方についてみていきます。
「○○先生」の後に書く
脇付けである御机下・御侍史は、封筒の宛名や手紙の結びの挨拶に使います。封筒の宛名には、医師が在籍している医療機関と診療科を記した後、「○○先生 御机下」「○○先生 御侍史」と宛名の脇(左下)にやや小さめの文字で添えましょう。
手紙の結びの挨拶には、日付・名前・宛名(○○先生)と記し、宛名の左脇に御机下・御侍史を添えます。
ただ、一般的に「先生」という語句には、敬意を表す意味があります。「先生」に脇付けを添えると、二重敬語になり誤用となるため、「○○ 御机下」と使うのが正しいと思うかもしれません。
しかし、敬称である「先生」を外して御机下や御侍史を添えると、相手に失礼な印象を与える恐れがあります。「先生」と御机下・御侍史はセットで記しましょう。
「御中」との違い・使い分け
実際に自分が医師宛てに手紙を書く際に、御机下・御侍史と「御中」をどのように使い分けるか迷う人もいるでしょう。宛名を書くときに使う「御中」は、組織や部署など団体に添える敬称です。
そのため、病院や特定の診療科宛てには、「○○病院 内科 御中」と記載します。一方、「○○先生 御中」と個人宛てに御中を使ったり、「○○病院 御机下」と施設宛てに御机下・御侍史を使ったりするのは誤りです。
また、施設宛ての敬称と個人宛ての敬称を併用することはできません。「○○病院 御中 ○○先生 御机下」のような使い方は誤りなので、間違わないように注意しましょう。
御侍史・御机下の使い分け
御侍史・御机下はどちらも医師への敬意を表す脇付けで、基本的にどちらを使っても問題はありません。
ただし、御侍史は付き人へ渡すという意味があるため、秘書がいる立場の医師に使うのが一般的です。秘書がいない医師には、御机下を使う方が適しています。
また、御机下は特定の医師に向けて使う脇付けです。手紙を書くときに、医師の名前がわからないときには、御侍史を使いましょう。
御机下・御侍史を使うときの注意点
医師との文書のやり取りは手紙だけでなく、電子メールですることもあるでしょう。ここでは、手紙以外の場面で御机下・御侍史を使うときのポイントについてみていきます。
メールでの使い方
基本的に電子メールは医師本人に届くため、御机下を使うのが適切です。付き人ヘの手紙を渡すことを意味する「御侍史」は適切でないので使わないようにしましょう。
ただ、脇付けは本来手紙の宛名に添えるものであり、簡略的な手段である電子メールに使うのはふさわしくありません。電子メールで御机下・御侍史を記載していなくても、相手の医師に悪い印象を与えることはありません。
電子メールに宛名を書く場合には、「○○病院○○科 ○○先生」と相手の所属と宛名だけ記載すれば十分です。
私信で使うことは少ない
御机下・御侍史は、どのような手紙でも使うことができます。本来、年賀状や暑中見舞いなどのハガキは、親しい間柄の人に対して送るものなので、脇付けを添える必要ありません。
私信の場合は「○○先生」でも問題ありませんが、慣習的に医師宛てのハガキには御机下・御侍史を使うことが多いようです。医師に暑中見舞いや年賀状を送る際には、宛名に御机下・御侍史を添えてみてもよいでしょう。
不要だと思っても使ったほうが良い
御机下・御侍史は仰々しい敬称のため、一般的に使われることはほとんどありません。そのため若い世代の医師の中には、手紙に御机下・御侍史を使うことに抵抗感を抱いたり、不要と考えたりする人もいるでしょう。
ただ御机下・御侍史は慣習的に使われてきたため、使わないと失礼だと感じる医師がいるのも事実です。
医師とのコミュニケーションを円滑にしたり、患者さんの情報提供や病院紹介をスムーズに進めたりするには、御机下・御侍史を使うのがおすすめです。自己判断で、御机下・御侍史を使わないと、「常識がない」と相手の医師に不快感を抱かせる可能性もあるので注意しましょう。
まとめ
御机下・御侍史は手紙の宛名に添えられる脇付けで、主に医療業界で用いられています。一般的に用いられている机下・侍史と比べると、仰々しい印象があります。
御机下・御侍史を使うかどうかは、手紙か電子メールかによっても異なるため、場面に合わせて使いましょう。医師と文書をやり取りするのに、御机下・御侍史に迷った際には、記事内で紹介した内容を参考にしてみてください。
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