看護師のコミュニケーションスキルは、患者さんの状況や悩みを理解してケアに活かす上で非常に重要な看護技術です。患者さんと信頼関係を築き、より良い看護を提供するには、どのようなコミュニケーションをしていけばいいのでしょうか。
本記事では、看護師が患者さんとコミュニケーションをとるときの基本的なスキルやポイントについて解説いたします。
看護師のコミュニケーションの重要性
看護師が患者さんとコミュニケーションをとる目的は主に2つです。
・患者さんの不安を解消するため
・治療が円滑に進むように導くため
入院する患者さんは大きな不安を抱えています。例えば、治療の効果や病気がどれくらい治るのか、いつごろ退院できるのか、入院中の仕事や家庭は大丈夫だろうかと、悩みは尽きません。
看護師は、患者さんの気持ちに寄り添い、適切な情報提供をすることで不安を減らすことが大切です。
治療を円滑に進めるという目的においても、看護師は患者さんの状態や悩みを把握する重要な役割を担っています。日常的に密なコミュニケーションをとることは、患者さんの顔色や体調など小さな変化に気づくためでもあります。異変があれば、すぐに医師や看護師に情報共有することで、迅速で適切な対処が取れるようになるのです。
患者さんが安心して治療を受ける上でも、質の高いチーム医療を実現する上でも、看護師のコミュニケーションスキルは非常に重要なのです。
看護師がコミュニケーションスキルを高めるポイント
次に、看護師が患者さんとコミュニケーションをとるときに意識したいポイントを3つご紹介します。
1.笑顔で接する
優しく穏やかな笑顔で話してくれる看護師の存在は、患者さんとその家族に安心感を与えます。
特に看護師の笑顔が大切になる場面は、患者さんの治療の経過が思わしくない時です。このような場面では患者さんの気持ちが落ち込み気味になり、前向きになれない状態が続きます。ストレスが溜まると免疫力の低下を招くため、治療をすすめる上でも良くありません。
そんなときこそ、看護師が笑顔でコミュニケーションをとり、少しでも前向きな気持ちになれるよう患者さんを支援することが大切です。
また、看護師の笑顔に対して、患者さんが笑顔で応えてくれると、しっかりと意思疎通がとれていることを確認できます。安心感を与えられれば、患者さん自身が心を開いて話をしてくれることも増えていくでしょう。
2.患者さんの話を聞く
「話が途切れないように頑張って話さなければ」と考えてしまう看護師もいることでしょう。しかし、看護師のコミュニケーションにおいて大切なのは、看護師自ら話しかけることだけではありません。患者さんの話をより丁寧に、深く聞く「傾聴」です。
患者さんが自分の気持ちや悩みを話す機会をつくり、「受け入れてくれている」と思えることは、信頼関係を築く上でも非常に重要です。
会話を途中で遮ることなく、しっかりとうなずき、相づちを打ちながら、患者さんに話をしっかり聞いている姿勢を伝えることがポイントです。時にはボディランゲージや笑顔などを見せることで、より話を理解していることが伝わりやすくなります。
自身が別の業務で時間に追われていると、患者さんに焦りが伝わってしまうこともあるでしょう。余裕をもって話を聞ける状況でない場合は、理由を伝えて他のスタッフに代わってもらうなどの臨機応変な対応も大切です。
3.共感する
不安を抱えている患者さんの心情を深く考え、共感する姿勢を伝えることも大切なポイントです。
患者さんが抱える病気を、看護師自身は体験していないことが大半です。看護師が一方的なコミュニケーションをとってしまうと、患者さんが自己開示をしてくれなくなったり、心の壁を作ったりしてしまいます。
看護師が患者さんに共感を伝えるには、以下の方法があります。
・患者さんが訴える負の感情を理解して同意する姿勢を見せる
(例)「その状況では確かに困ってしまいますね」
・患者さんの様子を言葉にして伝える
(例)「体調が悪そうですね」
・患者さんの行動や対応を尊重する
(例)「この状況の中でよく頑張りましたね」
・支えになりたいという思いを伝える
(例)「できる限りのことをしたいです」
表面的な言葉は患者さんにも伝わってしまうものです。何よりも、患者さんの話を聞き、受け入れ、共感することが大切です。
また、患者さんの感じていることに共感して理解しようとすると、看護師に求められることがわかるようになります。より質の高い看護を提供することにもつながるでしょう。
患者さんとのコミュニケーションでよくある悩みと解決策
幅広い年齢、性別、性格の患者さんとコミュニケーションをとる上で、どのように接していいか、わからなくなることもあるでしょう。
最後に、患者さんとコミュニケーションをとる上でよくある悩みと、その解決策をご紹介します。
悩み1.患者さんとの会話が弾まない
自分から積極的に話すタイプでない患者さんと会話が進まなくなり、気まずくなった経験はありませんか。
そのような患者さんに対しては、事前に話題を準備しておくことをおすすめします。まずは天気や時事ネタ、食べ物に関する話題などから会話を始め、会話が弾むようになってから患者さんの体調を聞いていくのが良いでしょう。
また、看護師の側から話題を振る際にも「一問一答」のような会話にならないように、患者さんの返答に対してさらに話題を広げるのも大切です。
例えば食べ物の話題であれば、患者さんの返答に対して「おいしいですもんね」などと共感しながら、患者さんの普段の食生活を聞いてみましょう。
会話を盛り上げながら、患者さんの生活習慣を聞き出すことができれば一石二鳥といえます。
悩み2.患者さんから本音を聞き出せない
本音で話すことを避ける患者さんもいます。患者さんが本音を口にしない理由を考えて、それに沿った対応をすることが大切です。
例えば薬の飲み忘れが多く、その理由を看護師になかなか明かしてくれない患者さんがいたとしましょう。患者さんに落ち度があったとしても決して責めるような姿勢で対応してはいけません。
聞き方を工夫し「お薬、ちゃんと飲んでいますか?」ではなく「お薬は今どれくらい余っていますか?」といった質問に言い換えます。
また、薬を飲み忘れたという事実だけに着目して叱責するのではなく、飲み忘れた原因を患者さんと考える姿勢を意識するのも大切です。
患者さんの身体のことを最優先に考えたいという思いが伝われば、信頼関係の構築につながります。次第に、自分から本音を打ち明けてくれるようになります。
悩み3.不安を感じている患者さんへの対応の仕方がわからない
強い不安を抱える患者さんへの対応に悩む人もいるかもしれません。
そのような患者さんに対しては、まずは何に対して不安を感じているのかを具体的に聞き、必要な情報を提供しましょう。患者さんが明かした思いを解消するために治療内容や手順、日程、対処法などをわかりやすく説明して、少しでも不安が和らぐようにします。
医師の説明をその場では理解できていたとしても、わからないことが出てきたり、不安が残ったままだったりするかもしれません。繰り返し丁寧に説明し、患者さんがもつ負の気持ちを少しずつ和らげることが大切です。
また、説明する際に患者さんに触れる「タッチング」を取り入れるとより効果的です。患者さんに安心してもらうために、言葉だけでなく非言語的コミュニケーションも意識してみましょう。
悩み4.怒っている患者さんへの対応の仕方がわからない
怒っている患者さんに対しては反論せず、とにかく話を聞くことから始めましょう。
患者さんが何に怒りを感じているのかをしっかりと整理し、共感の姿勢を示していきます。解決策を提示するのは、患者さんの怒りが収まってからにするのが無難です。
また、怒っている患者さんには複数人で対応することも大切です。真剣に対応しようとしている姿勢を患者さんに伝えることができ、看護師側の負担を減らすこともできます。
一人で対応せざるを得ない場面であれば、ひととおりの対応を終え、患者さんから離れてからすぐにリーダー看護師や看護師長に報告しましょう。一人で抱え込まないことが重要です。
まとめ
患者さんとのコミュニケーションは看護師の業務に欠かせません。信頼関係をスムーズに構築できれば、患者さんの満足度は大きく向上します。
患者さんの思いや不安を受け入れ、共感し、理解しようとする姿勢が良いコミュニケーションにつながります。
コミュニケーションは知識や経験を積み重ねることで上達します。悩んだら先輩や同僚に相談し、定期的に振り返りながら学んでいきましょう。