バレー徴候は英語で”Pronator Drift”とも呼ばれ、特定の神経系の機能を評価するための検査の1つです。
バレー徴候という言葉は耳にしたことがあっても、実際にどのような疾患において陽性となるのか、またどのように評価するのか、よく分からないという人もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、バレー徴候の概要や評価方法について解説します。
バレー徴候とは
バレー徴候とは、特定の神経系の機能を評価する検査の1つです。
バレー徴候は、イタリアの神経学者Giovanni Mingazzinが発表した「ミンガッツィーニ徴候」という身体所見を、フランスの神経学者Jean A Barreが変法として発表したものといわれています。ミンガッツィーニ徴候とバレー徴候は、いずれも中枢性(脳や脊髄)の上下肢の⿇痺を評価する⽅法です。
脳の運動野から出る神経経路のうち「錐体路」と呼ばれる通り道は、主に上肢や下肢に運動の指令を伝達する役割をもちます。この錐体路が障害されると上肢や下肢に麻痺が生じ、ある特定の体位が保てなくなります。
以下は、バレー徴候を評価している様子の画像です。
バレー徴候により疑われる疾患と検査
脳血管疾患や神経疾患などの総合的な判断を行う際、CTやMRI画像による病変部位の診断とともに、医師による神経学的検査も行われます。
神経学的検査の主な項目は、以下の通りです。
● 意識状態
● 言語
● 脳神経
● 運動系
● 感覚系
● 反射
● 協調運動
● 髄膜刺激症状
● 起立歩行など
上記の神経学的検査のうち、バレー徴候は運動系の評価に含まれ、上肢や下肢の麻痺の有無や程度を検査します。バレー徴候が認められる場合、脳梗塞や脳出血、その他の錐体路障害が疑われます。
上肢バレー徴候の評価方法
上肢バレー徴候の評価の手順は、以下の通りです。
まず、患者の手のひらを上に向け、両腕を前に伸ばしたまま肩と同じ高さまで水平に上げてもらいます。この状態のまま目を閉じてもらい、少なくとも10秒間、その体勢を保つように伝えます。
錐体路障害の可能性がある場合は、麻痺側の上肢の手のひらが内側に回りながら(回内)、次第にゆっくりと腕が下がってきます。この場合、バレー徴候は陽性と判定されます。
上肢バレー徴候をチェックする際に目を閉じてもらう理由は、視覚からの情報を遮ることで、正確な錐体路障害を評価するためです。
下肢バレー徴候の評価方法
下肢バレー徴候の評価の手順は、以下の通りです。
まず、患者にはベッドの上にうつ伏せになってもらいます。下肢バレー徴候をチェックする際は、視覚による検査精度への影響はないため、目は閉じなくて構いません。
次に、両膝関節が接しないように直角に曲げ、その姿勢を保持してもらいます。麻痺がある場合、麻痺側の下肢は自然に下降し、落下したり、いったん落下して元に戻ったりするなどの症状が現れます。この場合、下肢バレー徴候は陽性です。
下肢の錐体路障害では屈筋よりも伸筋のほうが強く緊張するために、このような症状が出現します。
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まとめ
バレー徴候とは、脳血管疾患や神経疾患などの総合的な判断を行う際の神経学的検査の1つです。特に上下肢の運動機能を評価する際に行われ、バレー徴候が陽性の場合、脳の運動野から出る神経経路のうち「錐体路」に障害があると考えられます。
バレー徴候が陽性の場合、脳梗塞や脳出血などの疾患が疑われます。ただし、あくまでも画像検査の所見や臨床症状と併せて総合的に判断しなければなりません。