急変時の対応方法は?流れや症状別に紹介

急変時の対応方法は?流れや症状別に紹介

急変時の対応方法は?流れや症状別に紹介

急変時の対応は、看護師にとって重要なスキルの一つです。患者の命を守るため、迅速かつ適切に判断し行動することが求められます。

この記事では、急変時の対応の流れや症状別の対応方法について、詳しく解説します。急変時に心がけるべき実践的なポイントも紹介するので、最後まで読んでみてください。

参照元:
日本救急看護学会「救急初療看護に活かすフィジカルアセスメント ミニガイド」
ゼロからわかる救急・急変看護 成美堂出版

急変時の対応の流れ

看護師として病院や介護福祉施設で働くうえで、患者の急変に遭遇することは避けられません。患者の命を守るためにも、看護師には迅速な対応が求められます。急変時の対応は、以下の4ステップで行います。

1. 迅速評価
2. 報告と応援要請
3. 一次評価
4. 二次評価

順番に見ていきましょう。

1.迅速評価

患者の急変に遭遇したときに、まずとるべき行動は「迅速評価(第一印象)」です。迅速評価とは、患者と接した最初の数秒間で、速やかに状況を把握・評価することを指します。患者から受ける印象や看護師の五感を大切にし、「生命が危機的な状況にあるかどうか」を見極めることがポイントです。

迅速評価では、次の例のように、血圧計や聴診器などを使用せずに異変を察知する必要があります。

 呼吸がいつもと違う
 活気がない
 顔色が悪い
 視線が合わない
 苦しそうにしている など

異変を感じたら、まずは声をかけながら、意識レベルと気道が確保できているかを確認し、呼吸状態を観察します。同時に皮膚を触ったり脈をとったりして、循環動態が危機的な状況に陥っていないか、素早く判断しましょう。

2.報告と応援要請

迅速評価の結果、他のスタッフの協力が必要だと判断した場合には、応援を呼びます。急変の発見が病室であればナースコールで、それ以外の場所であれば、大きな声で周囲の人に助けを求めましょう。夜勤帯や休日でスタッフの数が少ないときは、院内のホットラインを用いて応援を要請することもあります。

医師と情報共有をする際には、必要な情報をわかりやすく手短にまとめ、報告することが重要です。コミュニケーションツールの“SBAR(エスバー)”や、“5W1H”を用いて患者の情報や現状を説明すると、簡潔かつ的確に伝わります。

“SBAR”は、「分かりやすく相手に伝えること」を目的として考え出されたコミュニケーション手法です。

 S(Situation):患者の状態・主訴
 B(Background):背景・臨床経過
 A(Assessment):評価・現状の判断
 R(Recommendation):提案と依頼・具体的な要請内容

SBARを用いれば、緊急時でも簡潔かつ正確に患者の情報を共有し、医療チーム内のコミュニケーションを円滑に進められます。

また、近年では、SBARに“Identify(自分)”と、“Confirm(口頭指示の復唱確認)”を加えた“I-SBARC(アイエスバーシー)”に沿った報告手段も推奨されています。I-SBARCを用いる場合には、最初に自身の所属部署や氏名、患者の氏名を伝え、最後に医師の指示を復唱します。

参照元:日本内科学会雑誌第100巻第1号 診療の安全と質を向上させるツール

3.一次評価

迅速評価で「心肺蘇生に対する救命措置は必要ない」と判断された場合、一次評価としてバイタルサインの測定をしながら、患者の緊急度を見極めます。評価には“ABCDEアプローチ”と呼ばれる方法を用います。これにより、患者の状態を系統的に評価できるのです。

 A:Airway(気道): 気道閉塞(発声の有無・シーソー呼吸・陥没呼吸・高調性の連続性副雑音)
 B:Breathing(呼吸):呼吸数、異常呼吸・努力呼吸、気管の偏位、頸静脈怒張、呼吸音、SpO2
 C:Circulation(循環):血圧、心拍数、四肢の冷感、冷汗、蒼白、橈骨動脈の触知の程度
 D:Disability of CNS(中枢神経障害):意識レベル、瞳孔所見、麻痺
 E:Exposure and Environmental control (脱衣と外表・体温):低体温、高体温、外観

出典:日本救急看護学会「救急初療看護に活かすフィジカルアセスメント ミニガイド」

上記の項目をAからEの順番に確認することで、患者の状態を総合的に把握できます。

一次評価中に異常を発見した場合には、評価の途中であったとしても、救急処置を行います。状態がさらに急変する可能性も考慮し、柔軟に対応できるように心がけましょう。

一次評価を通じて得られた情報は、その後の治療方針にも影響します。看護師の正確な評価や適切な対応が、患者の命を守る鍵となるのです。

4.二次評価

二次評価では、原因検索のアセスメントを中心に、全身状態の再評価を行います。その際は“OPQRST法”や“SAMPLER”といったツールを使用します。

OPQRST法は、痛みや症状の評価に用いられる手法です。問診で必要な情報の頭文字をとったもので、具体的には以下のとおりです。

 O:Onset(発症)
 P:Provocation(誘因・増悪要因)
 Q:Quality(性状・品質)
 R:Radiation(放散・部位への広がり)
 S:Severity(重症度)
 T:Timing(時期)

また、SAMPLERは、病歴の聴取に用いられます。

 S:Sign(症状)
 A:Allergy(アレルギーの有無)
  M:Medication (内服薬の情報)
 P:Past medical history(既往歴)
 L:Last meal(最終飲食)
 E:Event(出来事)
 R:Risk factor(危険因子)

問診の際、患者の状況によっては「はい」「いいえ」で回答できるような質問を使うとよいでしょう。患者への質問が難しい場合は、家族や付き添いの人から情報収集を行います。

記録を行う際のポイント

急変時には、ふだんの看護記録のような“SOAP”に沿った記録ではなく、経時的に患者の状態や実施した処置がわかるよう詳細に記録を残します。下記の内容を意識して記録するとよいでしょう。

 患者の状態・状況
 バイタルサインやモニタの情報
 5W1H(いつ・どこで・誰が・どうなったか/どのようにしたか)
 実施した処置やケアと患者の反応
 家族への説明内容と反応

経時記録では、時間を正確に記すことが重要です。場合によっては分単位・秒単位での記録が求められるため、基準とする時計を設定し、その時計を見ながら記録を残していきます。

少人数で急変の対応をしているときは、記録に手が回らないこともあるでしょう。その場合には、最低限必要な情報のみをメモし、後から正式な記録を残します。

注意点

患者に急変があると、焦ってしまうこともあるでしょう。しかし、緊急時こそ落ち着いて冷静に行動する必要があります。

まずは思わぬミスを防ぐべく、ダブルチェックを徹底しましょう。また医師の指示で分からない部分があればその場で聞き直し、しっかりと理解したうえで処置を行います。急変時であってもスタンダードプリコーションを意識して行動しましょう。

症状別の急変対応方法を紹介

ひとくちに“急変”といっても、患者の症状や訴えはその時々によりさまざまです。ここからは、患者の症状別の対処方法を紹介します。

ショック症状

“ショック症状”とは、なんらかのきっかけで急性循環不全を起こし、体内の組織に十分な酸素を送ることができない状態のことを指します。臓器不全に陥ったり、生命を落としたりといった可能性もある危険な状態です。

急変した患者がショック症状を起こしているかどうかを判断するには、次の5徴候を確認します。

<ショックの5徴候(5P)>
1. 皮膚蒼白
2. 虚脱
3. 冷感
4. 脈拍不触
5. 血圧低下

これらの兆候は同時に出現するとは限りません。ショック症状を疑ったら循環動態に注意して観察を続けましょう。

また、ショック症状が出ている患者を発見したら、速やかに応援を呼び、適切な対処ができる体制を整えることが重要です。医師の指示のもと、以下のような処置を行います。
 酸素投与の開始
 静脈路の確保
 バイタルサインの継続的な観察
患者の状態を常に把握し、変化に迅速に対応できるよう備えましょう。

参照元:ショック – MSDマニュアル プロフェッショナル版

胸痛

突発的な胸痛には注意が必要です。狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、解離性大動脈瘤、肺動脈塞栓症などの重篤な疾患の兆候である可能性が高いためです。

まず、起こっている胸痛が命に関わるようなものなのかどうか、アセスメントする必要があります。痛みの性質や部位、持続時間などを詳しくヒアリングしましょう。以下のような特徴がある場合は、重篤な疾患を疑います。

 突然の激しい痛み
 胸部全体や背部に広がる痛み
 冷や汗を伴う痛み
 呼吸困難や動悸を伴う痛み など

また、患者の表情や意識レベル、バイタルサイン、循環動態を確認します。循環が障害されている場合、ショック症状を起こすこともあるため、迅速な対応が求められます。医師の指示に従いながら、必要に応じて薬物療法や緊急処置ができるよう準備を整えましょう。

腹痛

腹痛には、さまざまな原因が考えられます。症状の原因を推測するために、“OPQRST法”や“SAMPLER”を用いて問診を行います。

問診に加えて、下記のように視診・聴診・打診・触診を行い、以下を確認していきましょう。

 問診:発症時間・誘因、痛みの部位、嘔気・嘔吐の有無、便や尿の性状 など
 視診:腹壁の膨隆、腹部の拍動 など
 聴診:蠕動運動
 打診:鼓音の有無
 触診:圧痛・筋性防御・ブルンベルグ徴候の有無

吐血や下血を伴う場合、痛みが徐々に増してくる場合には、命の危険につながる疾患も疑われます。患者の表情や反応を観察しながら、迅速に対応しましょう。患者が嘔吐した場合には吐物の誤嚥がないよう、体位の調整を行います。医師の指示に従いながら、血液検査や画像検査など、適切な検査や処置につなげていきます。対応の際には、患者の不安を軽減するための声かけも忘れずに行いましょう。

頭痛

頭痛は、大きく分けて2種類あります。

1. 一次性頭痛:脳の病気が原因ではない、さまざまな原因で起こる頭痛
例:片頭痛・緊張型頭痛 など
2. 二次性頭痛:原因疾患が特定できる頭痛
例:くも膜下出血・脳腫瘍・髄膜炎 など

なかでも二次性頭痛は危険度が高く命に関わるため、早急な対処が必要です。

頭痛を訴える患者への対応では、バイタルサインとともに、意識レベルや麻痺の有無などを重点的に観察します。観察項目の例を見ていきましょう。

 バイタルサイン
 血糖値(低血糖で頭痛が起こることもあるため)
 対光反射・瞳孔不同
 意識レベル
 痛みの左右差
 髄膜刺激症状の有無
 痛みの程度・部位
 既往歴
 めまい
 転倒で頭をぶつけていないか など

患者から「これまでに経験したことのないような強い痛み」などの訴えがある場合は、くも膜下出血が疑われます。また、脳梗塞は痛みが出現しないこともあるため、意識レベルや麻痺の有無にも注意が必要です。

呼吸困難

呼吸困難は、なんらかの原因で体に酸素を十分取り込めない状況に陥り、患者が不快感や努力感を自覚している状態です。精神的な不安や恐怖感から呼吸困難を訴えるケースもあり、評価が難しい場合もあります。患者の様子をしっかりと観察することが大切です。

呼吸困難の原因は、気胸や心不全・塞栓症・気管支喘息・アレルギーなどさまざまです。そのため既往歴や検査結果などから原因を特定し、適切な治療につなげます。次の項目を重点的にチェックしましょう。

 ショック症状の有無
 呼吸音
 バイタルサイン
 呼吸の回数や特徴
 意識状態
 精神的な動揺はないか(不安や恐怖心など)
 呼気・吸気のどちらで呼吸困難を感じるか など

気道が閉塞している場合には、すぐに気道確保を行う必要があります。酸素飽和度が下がっていれば、医師の指示に従って酸素を投与します。

また、呼吸困難が持続する際には、患者が楽に呼吸ができるよう体位を調整しましょう。たとえば気管支喘息やCOPDによる呼吸困難感が出現している場合、上半身が前傾姿勢になる「起坐位」をとることで楽になるケースもあります。

急変時対応のポイント

急変時は、時間を追うごとに患者の状況は変化していきます。患者の命を守るためには、スピード感のある対応が必須です。しかし、必要以上に焦ると、指示の聞き漏れや確認不足が起こりやすく、さらなるリスクにつながります。急変対応の際には、平常時同様に落ち着いた口調ではっきりと話し、指示の確認やダブルチェックはふだん以上に慎重に行うようにしましょう。

また、いざというときに適切に行動できるよう、日頃から知識の取得やシュミレーションなどを通じて実践的なスキルを磨いておくことも重要です。実際に急変対応を経験したら、必ず自身で振り返りを行い、次の機会に活かせるようにしておきましょう。

まとめ

この記事では、急変時の対応の流れや症状別の対応方法、実践で心がけるべきポイントを解説しました。

急変時の対応は、看護師にとって極めて重要なスキルです。冷静さを保ちつつ、迅速な対応ができるようになるには、日頃の準備と学習、経験の積み重ねが欠かせません。患者の命を守るため、自信を持って急変時に立ち向かえるよう訓練しておきましょう。

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