医療施設や介護福祉施設など、24時間体制で患者や利用者の看護をおこなう職場では、当直・宿直・夜勤といった勤務形態を採用しています。これらはすべて、休日や夜間帯に仕事をする勤務形態のことです。混同しやすいと感じる人も多いかもしれませんが、それぞれまったく異なる働き方です。
この記事では、当直、宿直、夜勤の定義や違いを詳しく解説していきます。また、各々の業務内容についても説明します。夜間帯の勤務をしている看護師はもちろん、これから夜勤帯の勤務を始めることを検討中の人も参考にしてください。
当直、宿直、夜勤とは
病院・介護福祉施設など、24時間体制で患者や利用者のケアが必要な職場では、次のような勤務形態が採用されます。
● 当直
● 宿直
● 夜勤
これらは、似ているようで業務内容や労働形態が大きく異なります。まずは、それぞれの定義について解説します。
当直とは当番制で働くこと
「当直」とは、休日や夜間などの勤務時間外に、当番制で勤務する働き方のことです。なお、日中に当直をおこなうことを「日直」、夜間の場合を「宿直」と呼び、これらを合わせて「宿日直(日当直)」と総称します。
当直は、緊急時に対応する待機要員という位置付けで、労働基準法によって定められている「法定労働時間」にはあたりません。そのため通常業務をおこなってはいけないのです。
宿直とは泊まり込みで待機すること
「宿直」とは、看護師や医師が夜間に職場に泊まり込みで待機する働き方のことを指します。あくまでも緊急時対応のための待機要員であり、通常業務はおこないません。
継続して宿直を担当する職員を配置する場合、施設の事業主は労働基準監督署へ「継続的な宿直又は日直勤務許可申請書」を提出し、許可を得たうえで、さらにいくつかの条件をクリアしなければなりません。
参照元:厚生労働省「断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について」
夜勤とは深夜帯に働くこと
夜勤は”夜間勤務”の略で、深夜帯(22時〜5時)を含む時間帯に働く勤務形態のことです。緊急時の待機要員として泊まり込む宿直とは異なり、通常勤務を行います。医療・介護福祉業界以外に、24時間営業のコンビニやホテルなどにも夜勤があります。
労働基準法では、週あたりの労働時間は日勤と合わせて40時間以内と定められています。また夜勤をする者には、事業主が夜勤手当を支給しなければなりません。夜勤手当は、基本賃金に割増賃金額を加算した金額とされており、勤務先により水準が変わります。
宿直と夜勤の違い
宿直と夜勤は、どちらも夜間に仕事をする勤務形態です。混同しやすいものの、実際の仕事内容や労働条件は、大きく異なります。
労働基準法をもとに、宿直と夜勤の特徴を比較してみましょう。
勤務形態 | 宿直 | 夜勤 |
労働時間 | 法定労働時間外 | 法定労働時間内 |
就寝設備 | 必要 | 不要 |
業務内容 | 定期巡回や電話対応など軽微なもの | 通常業務 |
手当 | 宿日直手当 | 夜勤手当(+深夜手当) |
上限回数 | 原則として週1回以下 | なし |
届出 | 労働基準監督署長の許可が必要 | なし |
労働時間の扱い
宿直と夜勤では、労働時間の扱いが異なります。夜勤は法定労働時間内の勤務ですが、宿直は法定労働時間外の勤務とみなされます。
法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間の上限のことで、原則週40時間・1日8時間以内と決められています。その理由は、過剰な労働を強いられることで起こる、労働者の健康被害を予防するためです。
宿直は、夜勤に比べ心身への負担が少ないと考えられており、労働基準法における労働時間規定が適用されないのです。
仮眠や休憩の有無
宿直勤務を命じる施設では、事業主は労働基準監督署の許可を得なければなりません。宿日直をおこなうための許可を得るには、就寝設備を整え、宿直にあたる職員が十分な睡眠を取れるようにすることが条件となります。十分な睡眠時間が確保されていることが前提であることから、宿直には休憩時間の規定はありません。
一方で、夜勤は法定労働時間に含まれます。そのため日勤と同様に、事業主は休憩を取らせる必要があります(労働基準法第34条)。
<法定労働時間と必要な休憩時間>
● 6時間以上8時間以下の場合:少なくとも45分
● 8時間を超える場合:少なくとも1時間
参照元:e-Gov法令検索「労働基準法」
業務内容
それぞれの業務内容についてもみていきましょう。
宿直とは、緊急時に備えて待機することで、通常業務はおこなえません。宿直ができる業務は労働基準法で「定期的巡視・緊急の文書又は電話の収受・非常事態に備えての待機等を目的とするもの」と限定されています。
一方夜勤では、日勤と同様に通常業務をおこないます。つまり、宿直と夜勤勤務の職員が同時に勤務している場合、夜勤の職員が通常業務をおこない、宿直は緊急時のために待機することになるのです。
参照元:厚生労働省「断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について」
手当
当直をする人には宿日直手当が、夜勤をする人には夜勤手当が支払われます。
宿日直手当は、宿直業務を担当する職員の1日の平均賃金の1/3以上とされています。厚生労働省では、宿日直手当の最低額の計算方法を次のように示しています。
宿日直手当の最低額=宿日直勤務総員数の1ヶ月所定内賃金額合計÷(1ヶ月所定労働日数×宿日直勤務総員数×3)
一方、夜勤手当の支給金額に法的な決まりはなく、それぞれの事業所が設定します。ただし、深夜帯に当たる22時〜翌朝5時に勤務した場合は、日勤の賃金に対して割増率25%以上の深夜手当を支給することが義務付けられています(労働基準法第37条)。
参照元:厚生労働省「断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について」
e-Gov法令検索「労働基準法」
回数の上限
宿直と夜勤とでは、回数の上限に違いがあります。宿直は原則として週1回まで、日直は月1回が上限です。ただし人員不足や労働者の年齢など一定の条件をクリアすることで、上限以上の回数が許可されることもあります。
また夜勤については、法律で定められた上限回数はありません。1週間あたり40時間までの法定労働時間を超過しなければ、何回でも行うことができます。
届出
宿直をおこなう職場は、労働基準監督署長に届出をする必要があります。事業主は管轄する労働基準監督署長へ「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書」を提出し、許可を得なければ宿直をさせることができないのです。
申請書には、次の項目を記載します。
● 基本情報
● 宿日直をする人の数
● 1回の宿日直人数
● 宿日直勤務の開始・終了時刻
● 一定期間における一人の宿日直回数
● 手当の金額
● 就寝設備の内容(宿直の場合)
● 勤務の態様
一方、夜勤の場合には、事業者が労働基準監督署長に届出をする必要はありません。
参照元:厚生労働省|医療機関の宿日直申請に関するご相談について
医師・看護師の当直業務の例
当直業務をおこなう医師や看護師は、あくまでも緊急事態に対応する待機要員です。そのため、基本的には通常業務はできません。ただし、一部の軽度な処置や短時間の業務に限り、通常業務が認められています。
ここからは、医師・看護師それぞれの当直業務の例を紹介します。
医師の当直業務の内容
医師の当直業務は、基本的に患者の対応に限られます。主に次の内容です。
● 注意が必要な患者の状態の変化に対応するための問診や診察、必要な軽度の処置、看護師への指示など
● 休日・夜間の外来患者への問診や診察、看護師への指示など
なお、上記は対応する患者が少数であることが条件となります。
看護師の当直業務の内容
看護師の当直業務の内容についてもみていきましょう。
● 休日・夜間の外来患者への問診や観察、医師への報告など
● 病室の定時巡回や、要注意患者の定時検脈・検温など
看護師の当直業務も医師と同様、少数の患者の対応が基本で、通常業務はおこないません。
看護師の宿直業務の例
宿直とは、夜間に当直業務をおこなうことです。そのため業務内容は当直業務と同様となります。
● 休日・夜間の外来患者への問診や観察、医師への報告など
● 病室の定時巡回や、要注意患者の定時検脈・検温など
短時間で負担の少ない内容であることが、宿直が通常業務をするうえでの基準です。
なお、介護福祉施設で宿直勤務をする場合、下記のように一部業務として許可されているものがあります。
● 入所者に対する検温
● おむつ交換の介助作業
ただし、宿直勤務者がこれらの業務をおこなう場合、短時間、かつ軽い介助であるという条件があります。目安は1回あたり10分、被介護者を抱き抱えない程度とされています。
看護師の夜勤業務の例
夜勤業務の内容は、職場によって変わります。ここでは一般的な業務内容を紹介します。
● 検温
● 点滴・採血・処置の介助
● 体位交換
● 急変対応
● おむつ交換や日常生活ケア
● トラブル対応
● 医師への報告
● カルテ記載 など
看護師の夜勤は、1回あたりの勤務が12〜16時間の「2交代制」、準夜勤・深夜勤に分かれて勤務する「3交代制」の2種類です。職場により勤務の形態や方針が異なるので、勤務シフトが自分に合うか確認しましょう。
まとめ
この記事では、当直・宿直・夜勤の言葉の違いや、それぞれの勤務内容について紹介しました。
当直:当番制で職場に待機すること
宿直:泊まり込みで職場に待機すること
夜勤:夜間帯に労働すること
同じ夜間帯に勤務する宿直と夜勤ですが、その内容は大きく異なります。違いを把握しておきましょう。
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